鍵は368店舗(2026年5月時点)という巨大なスケールだ。
同社はサプライヤーを買いたたかないと主張している。むしろ逆で、チェーン全体で必要となる膨大な量を、長期にわたって安定して買い取ると約束するそうだ。
売り先と量が確約されれば、サプライヤーは在庫リスクから解放され、良質な原料を優先的に、安定した価格で回してくれる。互いが得をする関係だ。仕入れ交渉力で構造的に劣る零細店との差は、もはや努力で埋まる種類のものではない。こういうことは例えば、大手イタリアンチェーンのサイゼリヤでも起きている。
これは大資本だけが築ける、極めて強固な参入障壁ということになる。
ドリンクバーを廃止した
納得の理由
空間の設計も面白いと思う。
焼肉きんぐは、食べ放題の鉄則だったセルフ式バイキングを捨てた。客は席を立たず、タッチパネルで注文し、すべてが席まで運ばれてくる完全フルオーダー制である。
集客の目玉とされてきたドリンクバーまで廃止した。一見、人手のかかる非効率な選択に見える。だが狙いは明快だ。客を席に固定することである。
交代で取りに立てば、団欒(だんらん)は途切れる。皿に並べた肉は鮮度を落とす。子連れの親は、子から目を離せないまま往復する苦痛を強いられる。焼肉きんぐはこれらを一掃し、客が「食べることと話すこと」だけに集中できる時間を差し出したということだ。
郊外ロードサイドという立地で、子連れファミリーから熱狂的に支持される理由がここにある。会話が途切れない店は、また来たくなる店なのだ。
もちろん、全部を運ぶとなれば従業員の負荷は跳ね上がる。肉の皿、スープ、ジョッキ、油で汚れた重い鉄板。一度に運ぶ重量は20~30kgに及ぶこともある。このジレンマを解いたのが、配膳ロボット「Servi」の大量導入だ。
人間より重いものを、疲れも知らず、混雑の最中でも安定して運び続ける。複数のテーブルへ同時に配膳と下膳をこなすため、店内の物流は劇的に最適化され、テーブルの回転率も上がった。結果として1店舗あたり1日9時間以上もの労働時間が生み出されているという。







