能力でも、人柄でもない…〈あなたを最後に守るもの〉にハッとした〈風、薫る第72回〉『風、薫る』第72回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第71回(2026年7月7日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

りんは謝るべきではない?

 もうええて。アバンで、山本(本田大輔)が亡くなった場面と、テイ(伊勢佳世)が「なんで死んじゃったの?」と取り乱すシーンの回想が入る。つらくて見ていられない視聴者もいるのではないだろうか。

 さすがにすぐに場面が切り替わり、院長室。

 りん(見上愛)は院長(筒井道隆)に呼び出されている。副院長(森田甘路)と今井(古川雄大)と直美(上坂樹里)が同席している。

「つまり、一ノ瀬さんが患者を自宅に帰宅させたせいで、亡くなったわけではないと?」
院長の確認への今井の回答は極めて慎重だ。

「いえ、確かに、自宅に帰したことが、死亡の原因となった可能性はあります。ですが、そのせいで亡くなったとは言えません。私が主治医として言えるのは、山本さんは外出しようが、病院にいようが、急変はあり得る病状だったということなんです」

 死亡の原因となった可能性はある。だが、そのせいで亡くなったとはいえない。山本は外出しようが、病院にいようが、急変はあり得る病状だった。

 この場では、院長が言うように、りんが山本を自宅に連れていったことが直接の死因ではないことを明確にしないとならないのだろう。そうしないと病院の名誉にもかかわる。

 院長はいつものように無表情、かつ淡々と振る舞う。
「一ノ瀬さん、謝るのはここまでにしてください。当院としての見解は、主治医の今井先生の診断になります。すなわち、大腸がんの末期で切除部再発と腹膜播種による死亡です。あなたが謝るのはおかしい」

 そう。謝るということは自分のミスを認めたことだ。逆にいえば自ら謝らなければ認めたことにならない。責任の所在が難しい問題において、謝罪のタイミングは重要だ。