
りん、包帯が巻けなくなる
「どんなに堅牢な石垣も小さな歪みから崩れる」
副院長の言葉の前に、りんが看護婦の控室の壁のひび割れを見つめている。以前にもりんが目を止めていたひびだ。彼女の心の壁の崩壊を意味しているのか、病院組織の崩壊の予兆を意味しているのか、はたしてーー。
りんはそのまま何事もなかったように働いている。院内でも山本のことは事件的には知られていない。
フユ(猫背椿)も詳しいことは知らない様子だ。
でも、りんの心は収まっていない。傍から見たら明らかに元気がなさそうだ。
ある日、患者の脈をはかろうとしたりんは、うまくはかれなくて戸惑う。なんとかやり過ごしたものの、今度は包帯がうまく巻けない。
フユが気を利かせて代わってくれる。
直美もりんが心配だ。でも彼女から何かを聞くことはない。「暑い」「看護服、夏用にできないのかなあ」などと、裏庭で休みながら何気ないことを言っていると、りんが自ら重い口を開いた。
「山本さん、最後に『助けて』って。山本さんの顔、声、手が、助けるって何?」
りんの頬を涙がつたう。
確かに、山本の「助けて」は何を意味していたのだろう。以前の「助けてください」は、テイを心配させないために嘘をつかせてほしいという頼みだった。
最期の「助けて」は何だったのか。妻に会って、もっと生きたくなったのか、それとも、妻のことを頼む、なのか……。こればかりは一生わからない謎。こういうのを墓場までもっていくというのだろう。
気丈に振る舞うりんが気がかりな直美。そんな直美にはトヨ(松金よね子)の容態の急変が伝えられて……。
こういうことは実際、病院に勤めていたら日常茶飯事だろう。だがこれはドラマ。ドラマでこれだけ立て続けに心配なことを描くのは挑戦的だ。








