「最近どう?」と聞かれて、あなたはどう答えているだろうか。
そつなく返しているつもりなのに、なぜか会話が続かない人がいる。一方で、いつも「感じがいい」と思われる人は、決まり文句など用意していない。それでも、その一言で場が和み、話が続いていく。この差は、どこから来るのか。アパレル史上最年少で上場した株式会社yutori社長・片石貴展氏は、新刊で意外なことを言う。感じのいい人がしているのは、気の利いた“言葉”を選ぶことではない、と。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局/淡路勇介)

自分の言葉で話せるようになりましょう。Photo: Adobe Stock

なぜ、あなたの返事は続かないのか

「最近どう?」「週末、何してた?」――こうした何気ない問いに、私たちはつい、こう答えてしまう。

「特に何も」「ジムに行ってきた」

一見、普通のやりとりだ。何も間違っていない。

ただ、この返し方には共通点がある。
どちらも、起きた出来事を名詞で報告しているだけなのだ。出来事は、そこで完結してしまう。聞いた相手は「へえ」としか返しようがなく、会話はそこで止まる。
感じのいい人の返しは、ここが決定的に違う。

「やったこと」ではなく「心の変化」を話す

片石氏が挙げるのは、たとえばこんな返し方だ。

「土曜、3ヶ月ぶりにジムに行ったら、めちゃくちゃキツくて、自分の体力の落ち方にショック受けてるとこ」
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より

同じ「ジムに行った」という話だ。それなのに、受ける印象はまるで違う。
違いは、報告している中身にある。「3ヶ月ぶり」という時間の経過、「めちゃくちゃキツくて」という今まさに感じている感覚、「ショック受けてる」という進行中の感情。
片石氏はこれを、「やったこと」ではなく「心の変化」を話すことだと呼ぶ。
出来事を名詞で報告すれば、話はそこで閉じてしまう。だが、人間は常に変化している。
片石氏は、この違いを口ぐせのレベルでこう言い表す。

自分を殺す口ぐせは、名詞で自分を閉じる。自分を活かす口ぐせは、動詞で自分を開く。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より

動いているものは、相手を引き込む。
「3ヶ月何があったの?」「体力ありそうだけど」――こうして会話は、勝手に続いていく。
感じのいい人は、気の利いたことを言っているわけではない。ただ、自分の中で動いているものを、そのまま一言そえているだけなのだ。

コツは「最近、~してる」を足すだけ

とはいえ、身構える必要はない。
片石氏によれば、これは特別な話術ではなく、「最近、~してる」を加えるだけでいい。

「特に何も」を、「最近、なんだか気が抜けてて、だらだらしてる」に変えてみる。
「ジムに行ってきた」を、「久しぶりにジム行って、体力の落ち方に自分でびっくりしてる」に変えてみる。
たったそれだけで、静止画から動画に変わる。

大事なのは、うまい言い回しを覚えることではない。
むしろ逆で、どこかから借りてきた気の利いたフレーズは、聞いている側にはすぐ見抜かれてしまう。必要なのは、自分の中で今起きている小さな変化に、目を向けることのほうだ。
感じのよさは、借りてこられない
「最近どう?」への“正解フレーズ”を探している限り、感じのいい人にはなれない。決まり文句は、誰が言っても同じで、その人らしさが宿らないからだ。
片石氏は、こう書いている。

心の変化が見える言葉だけが、聞いた相手の心を動かします。
――『自分の言葉で話せるようになりましょう。』より

感じのいい人の一言が心地よいのは、そこに、その人自身の心の動きがのっているからだ。
そしてその心の動きは、本人の中にしかない。だから、借りてこられない。
次に「最近どう?」と聞かれたら、うまいことを言おうとするのをやめて、今の自分に何が起きているかを、一言だけそえてみてほしい。それだけで、あなたの言葉は、ちゃんとあなたのものになる。

(本稿は、『自分の言葉で話せるようになりましょう。』の一部を引用したオリジナル記事です)