世界史は、人物名や年号をひたすら覚える暗記科目だと思われがちだ。だが、出来事の背景にある条件や因果関係をたどると、歴史は驚くほど立体的に見えてくる。乾燥地帯に大河が流れ、人が集まり、都市や文明が生まれる――。そんな「ここがこうなるから、こうなる」という考え方を重視した授業は、理系の受験生からも「わかりやすい」と好評だ。世界史が一気に面白くなる見方を紹介する。
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なぜ、理系の受験生が「わかりやすい」と感じたのか?
世界史の面白さは、人物や事件の物語だけにあるわけではない。もちろん、ナポレオンやチンギス・カンのような人物を追う楽しさはある。だが、世界史を本当に面白くするのは、その背後にある条件やメカニズムに目を向けることではないかと思う。
意外なことに、私の授業は理系の生徒さんから評判がいいことが多い。文系の皆さんにもありがたいことにご好評いただいているが、共通テストで世界史を使うために講座を受けに来る理系の生徒さんたちから、「わかりやすい」と言ってもらえることがある。
その理由は、おそらく私の授業のアプローチにある。私は世界史を、物語として語るよりも、「ここがこうなるから、こうなる」という因果関係や仕組みを重視して教えている。いわば、少し理系的なアプローチなのだと思う。
たとえば数学では、条件や仮定があり、具体例を並べ、そこから「だからこういうことが言える」と考えていく。私が本を書いたり授業をしたりするときも、基本的にはそれに近い。出来事をただ順番に追うのではなく、なぜそれが起きたのか、どういう条件がそろったからそうなったのかを考える。
世界史でも、定義をクリアにすることはとても大事だ。たとえば「オリエント」とは何か。オリエントという概念は、ある意味では公式にあたる。数学で加法定理を知っているだけでなく、それを証明できるように理解しておくことが大事なのと同じように、世界史でも用語の中身や成り立ちを理解しておく必要がある。
「オリエント」を丸暗記するだけでは、歴史は見えてこない
オリエントは、現在では中東という意味で使われる。中東は乾燥地帯であり、乾燥地帯では水が不足しやすい。だから、人々は大河の周辺に集まりやすくなる。人口が集中すれば、そこに文明が生まれやすくなる。さらに大河は交通路としても使えるため、川の間に位置するバビロンやバグダードのような都市は、大都市になりやすい。
このように、「オリエント」という言葉をただ覚えるのではなく、乾燥地帯、水、大河、都市、交通路という条件をつなげて考えると、歴史の見え方は変わってくる。出来事が単なる暗記事項ではなく、自然条件や社会の仕組みの中から立ち上がってくるものとして見えてくるからだ。
こうしたアプローチは、私自身の性格による部分もあるが、大学や大学院で歴史学を学んだ影響も大きい。歴史学というと、昔の資料や文献を読み込む学問だと思われがちだ。もちろん、それはとても重要である。ただ、歴史学はそれだけではない。
たとえば、ある都市と別の都市の距離がどれくらいあるのか。川を使って移動すると何日くらいかかるのか。そうした地理的条件を考えることで、資料には直接書かれていない出来事を類推できることがある。また、資料に書かれている出来事の背景に、どのような事情が反映されているのかを考えることもできる。
難関大が問うのは、物語ではなく「メカニズム」
大学受験で問われるのも、実はこうしたメカニズム的な部分である。世界史を物語として楽しむことはもちろん大切だが、難関大学の入試では、単に物語を知っているだけでは対応しきれない。出来事の背景にある条件や構造を理解しているかどうかが問われる。
世界史を面白くする視点とは、人物や事件の背後にある仕組みを見抜く視点である。なぜその場所に文明が生まれたのか。なぜその都市が栄えたのか。なぜ人々はそのルートを通ったのか。そうした問いを立てていくと、世界史は暗記科目ではなく、世界の成り立ちを読み解く学問になる。
出来事をただ覚えるのではなく、その背景にある条件やメカニズムを考える。そこにこそ、世界史の本当の面白さがあるのだと思う。
(本稿は『地図で学ぶ「深読み」世界史』著者へのインタビュー記事です)









