ある日、大雪で高速道路が凍結し、どうしてもトヨタさんの工場にジャスト・イン・タイムで蓄電池を納入できなくなるという事件が起こりました。

 翌日、お詫びに行くと、「川上さん、これがラインストップによる損失金額です」と言われ、請求書をもらうことになりました。「雪が降るというのは、前の日からわかっていたことです。準備不足です」

 そう言われると確かにそうですが、「厳しい会社だなぁ」と内心思いました。

 しかしこれも、工場勤務をしていなければ経験できなかったことです。また、仕事の価値をいつもお金に置き換える習慣があれば、ごく自然なことなのかもしれません。

 別の日には、工場長が留守のあいだに火災を起こし、その後の始末に追われたこともありました。製品も工場設備もやられてしまい、土日含め3日間、徹夜の作業となりました。

 工場でけが人が出ると、経理の頭では「労災の級数がいくらだからこれだけの支払いが発生するかも」というようなことがまず浮かんでくるはずです。

 しかし現場というものは、「それだけ」では終わらないのです。原因の究明はもちろんですが、被災したご家族へのお詫びも大事な任務です。また、役所への届け出や再発防止策の策定などもあり、ごくあたりまえのことをあたりまえに積み重ねていくことが求められます。それが現場の仕事なのです。

決算検討会という道場で
数字の読み方を教えられた

 この蓄電池事業部も統括する電池事業本部では、当時、毎月の月次決算の後、その内容を詳細に検証、検討する決算検討会というものが開かれていました。

 事業部ごとに経理責任者が決算内容を報告し、それをもとに鈴木一さん(電池事業本部総務部長)と、竹中秀夫さん(同本部経理部長)が、様々な角度から質問し、議論を深めて、課題や問題点を洗い出す場でした。

 同時に、担当の経理責任者が、決算内容に表れる経営状況をどこまで深く理解しているかが厳しく問われる、まさに「道場」でした。

 主任になると、この決算検討会に出席できるようになります。主任となってからの私は、決算検討会を乗り切るまでは、毎月の決算が終わった気がしなかったものです。