今回の参議院選挙の焦点であったねじれは解消した。次なる課題は、ねじれを解消して何をやるか、ということである。アベノミクスには、大きな期待を寄せつつも、その出口まで見届けないと最終評価は難しい。まず直面する課題は秋口の、来年4月の消費税率引き上げの判断と、抜本的な法人税減税へのコミットである。この2つをどう決断するのかが、最大の試金石だ。

第1の関門は消費税率の
法律通りの引き上げ

 国民が安倍政権を支持した理由は、憲法改正や国家主義的な思想よりも、アベノミクス経済政策に対する評価である。デフレから脱却し、企業業績が改善して所得が増え物価が上がる。こうしたバランスのとれた経済を取り戻すことへの期待だ。

 円安や株価の上昇などによって実体経済も動き始めているが、いまだ本格的な賃金の上昇は起きておらず、デフレ脱却後の出口戦略まで見てみないと、前向きな評価は難しい。

 そのような経済運営に立ちはだかる2つの関門がある。

 一つは、9月にも行われる予定の、消費税率の来年4月の8%への引き上げの判断、もう一つは、経済成長戦略としての法人実効税率の引き下げの帰趨である。

 前者について、消費税率を予定通り引き上げ、財政健全化のコミットを内外に示すことの重要性、社会保障財源を安定的にさせ安心効果を国民に与えることの重要性は言い尽くされているので、ここでは繰り返さない。

「消費税率の引き上げは、外国の投資家を喜ばせるだけだ」という官邸アドバイザーの発言があったが、それは全くの暴論だ。消費税率の引き上げは、金利高騰リスクを軽減させ、わが国経済の持続的な成長につなげていくため、さらには社会保障の充実のために行うのである。決して外国投資家のために行うわけではない。

 消費税率引き上げ後の一時的な景気の落ち込みには、12年度予算の決算剰余金(1兆3000億円程度)の一部を活用した補正予算編成で対応が可能である。