原発不明がんに冒されたグルメ好きの夫が最後の晩餐に選んだ3つの味とは写真はイメージです Photo:PIXTA

原発不明がんに冒された東保雄さんは、余命1週間と宣告され、在宅での最期を選んだ。固形物はほとんど口にできず、食べられるものは限られていた。死期が確実に迫るなか、グルメだった彼が最後に食べたいと願った3つの料理があった。夫の望みを叶えたい妻の心と、料理人たちの意気が交差する。※本稿は、東えりか『見えない死神 原発不明がん、百六十日の記録』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。

原発不明がんの治療で
趣味の食事を制限される毎日

 保雄の趣味は食事だ。グルメと言ってもいいと思う。美味しいものに目が無く、どこかで情報を聞きつけると、評判が良いから食べに行ってみようといつも誘ってくれた。

 値段に見合わない味の店にはきちんと意見を言う。行きつけの店でもはっきりと「これは美味しくない」と伝え、どこをそう思うのかも説明した。気に入った店はとことん贔屓にして、定期的に通っていた。お酒も好きで、食事のジャンルに合わせて自分で選ぶことを好んだ。

 自宅でもそうだった。仕事から帰宅して食卓につくと、「今日の料理に合うお酒は何かな」とまっさきにそれを尋ねる。私の手料理でも一定のレベルに達していないと機嫌が悪くなる。気に入らない料理だと「舌がバカなんじゃないの?」と平気で言い放つ人だった。