こうした構造の中で、スマホはしばしば、「意志を奪う」「能力を削ぐ」「感情を麻痺させる」など、「自分をダメにするもの」として語られます。

 しかし、本当にそうでしょうか?スマホは、「緊張を和らげる」「孤独を紛らわせる」「情報や知識を得る」「他者とつながり、支え合う」メディアであり、手段ではないでしょうか?

『スマホは心を操る』書影スマホは心を操る』(木村忠正、朝日新聞出版)

 にもかかわらず、「見てしまった」「長く使ってしまった」というだけで、それが「依存」とラベルを貼られてしまう。このように、スマホ依存というラベルには、使用の実態よりも「使いすぎてはいけない」という道徳的コードが強く働いているのです。

 ここまでの議論を踏まえ、筆者は、スマホに惹かれるのは、設計された使いやすさに反応している自然な行動であり、私たちは「やめられない感覚」に対して、もっと柔軟な理解を持つべきだと提言したいと思います。

 私たちは「依存かどうか?」という問いを超えて、「スマホとどのような関係を築いているか?」という観点へ転換する必要があるのです。この視点では、利用の質、目的、状況、心理状態を含めてスマホとの関係性を捉えることを重視し、「病理ではない見方」や「使いすぎの向こうにあるニーズ」を探ることを目指すことが重要だと考えます。

(注3)ニューポート、C.(2021)『デジタル・ミニマリスト――スマホに依存しない生き方』(池田真紀子訳)、早川書房