「30日以内に出国」の恐怖
タワマン「投げ売り」の足音

 そもそも中国人が海外に移住する理由は主に3つある。それは、資産の保全・教育環境・言論の自由だ。このため、移住先で自宅を買うのは資産の保全の一環としての行動となる。教育環境はさきほどの留学生もあるが、小学生の子どもを持つ親が帯同して来る場合も多い。子どもを入れたい学校としては、インターナショナルスクール、有名公立小、中学受験で有名な予備校SAPIXがターゲットとなり、これらの学区内などの近隣に住む人が多い。文京区の人気公立小の通称「3S1K」(誠之・千駄木・昭和・窪町)が有名だ。

 こうなると、その学区内の不動産価格は上がりやすくなる。不動産価格は購入資金の量が増えれば上がるからだ。その際の資金の流入は中国元を地下銀行で日本円に換金する方法が取られることが多いという。法的には、中国人は年間5万ドルまで外貨に両替可能だが、1ドル160円として800万円ほどで自宅が買える訳がない。

 マンションは都市生活者の原風景として湾岸のタワーマンションは買われることが多かった。中国では土地は国のもので、個人が所有することができない。このため、土地・戸建てニーズも中国人にはある。都心部では高額帯エリアほど地価が上がっており、数年前より実勢価格が跳ね上がっている実態がある。

 この様に、日本に移住してくる中国人という買い手がコロナ禍以降増えたために、日本の不動産価格は上昇傾向を示してきた。

 しかし、経営・管理ビザの厳格化から、ビザが更新できないと30日以内に出国を命ぜられる。在留カードに穴を開けられてしまうのである。海外からも保有を続けたり、賃貸に出したりすることもできる。ただし、生活拠点を日本から移すことを契機に、任意に売却を選ぶ所有者が出る可能性はある。たった30日の期間で売却するとなると投げ売りにならざるを得ない。

 もし、マンション価格が下がり始めたら中国人は物件を売ると私は聞いている。これまで買い手しかいなかった中国人に、今度は売り手も生まれることになりそうだ。2013年以降の金融緩和で上げ続けてきた不動産相場は岐路に立っていると言えるだろう。

 実際、東京都中央区の2億円以上の中古マンションの成約件数は2026年に入って前年比で6割減になっている。晴海などの湾岸のタワマン購入者の激減には中国人の動向も強く関与していることの証明だと私は考えている。

 こうして増加一辺倒の中国人移民だった「潤日」は一旦終焉を迎えつつある。今後は、経営・管理ビザの代替案が出てくるのか、このまま狭き門となるのか、日本政府の舵取りから目が離せない状況にある。