公的医療保険の未来のために
幕を閉じた紙の健康保険証

 導入当初は、カードをかざしても情報が読み取れなかったり、カードに他人の情報がひもづけされていたりするトラブルが大きく報じられ、マイナ保険証の利用は伸び悩んでいた。だが、26年4月現在の利用率は68.15%で、7割近い人がマイナ保険証を利用するようになっている。

 今もマイナ保険証を敬遠する声は聞かれるが、ますます進行する人口減少社会を乗り切るためにはDX化は避けられない。26年1月1日現在、1億2295万人の日本の人口は、56年には1億人割れとなり、60年には9615万人、70年には8700万人まで減少すると推計されている〔国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2023年推計)〕。

 医療機関だけではなく、日本社会全体が人手不足に悩んでいる。限られた財源と人材を生かすためには、機械にできることは機械に任せて、人には人にしかできないことに専念できるような社会にしていく必要がある。公的医療保険の持続可能性を高めるために、紙の健康保険証はその役目を終えたのだ。

 だが、形態は変わっても、被保険者証の役割は資格情報を正確に把握して、患者が必要な医療を受けるためのものであることに変わりはない。100年間、資格確認のために常に制度に伴走してきた紙の健康保険証をねぎらいつつ、マイナ保険証が公的医療保険制度の持続可能性を高めるものになることを期待したい。

参考文献:『実務家必携健康保険手続早わかり』(健康保険事務研究会編)、『健康保険法施行経過記録』(社会局保険部)
著者・早川幸子さんのプロフィール