ブレークスルー・メディシンのポッツCEO
米バイオテック企業ブレークスルー・メディシンのスティーブ・ポッツ最高経営責任者(CEO)は、治療が難しいがんに対する医薬品を開発している。ただし、具体的に何に取り組んでいるかは聞かないでほしい。情報が漏れれば、中国企業に先を越されると懸念しているからだ。
ポッツ氏のチームが手掛け、米食品医薬品局(FDA)から承認を得た医薬品は計13品目に上る。秘密保持のために極限とも言える対策を講じているバイオテック企業が増えており、ブレークスルー・メディシンもその一つだ。ポッツ氏はベンチャーキャピタル(VC)企業への売り込みを行わず、学術会議での発表も行っていない。同社は、信頼できる少数の富裕層と大学からのみ資金を受け入れている。
創業間もないバイオテック企業はこれまで、投資を呼び込むために研究内容を公開するのが一般的だったが、現在では非公開とするケースが増えている。競合企業(その多くは中国企業)に研究を模倣され、自社よりも速いペースで臨床試験(治験)を進められるのを防ぐためだ。
「研究内容についてどこまで公表するかを、より慎重に考えなければならない」とポッツ氏は述べた。
今では、製薬会社が主要な医学会議で治験の成果を発表すると、中国企業が同じ科学的知見を用いて、競合する治験を始める恐れがある。中国での研究は、米国内と比べて2倍のスピードで進み、コストは半分で済むこともある。そのため、米バイオテック業界にとって中国企業の脅威が増しており、製薬会社は大小を問わず、将来有望な新しい科学的知見に関する情報の公表範囲を見直すようになっている。
大手企業でさえ、中国のパートナーと治験を行う際には情報を厳重に管理している。米バイオ医薬品大手 バイオジェン は、中国の規制当局が求める情報以外、独自情報を一切提供していない。
バイオジェンの開発部門責任者、プリヤ・シンハル氏は「すぐに追随されるという懸念は、まさに現実のものだ」と語る。「(中国のバイオテック企業は)よく知られたターゲットに対して、それを改良し、より精密なものに仕上げるのが非常にうまくなっている」







