ユニ・チャームや花王は、長年にわたり日本のママたちに寄り添い、信頼を積み重ねてきました。

 価格も手ごろで、全国のドラッグストアやスーパーに安定的に供給されています。ママたちにとって「迷ったら国産ブランドを選べば安心」という日本人的感覚が自然と根づいていたのです。

「パンパースはちょっと高いな」
わずか5秒で下される母の決断

 少し余談になりますが、日本人は国産のブランドが好きです。

 私は紙おむつの他に、シャンプーやコンディショナーのカテゴリーも担当していました。

 お店にいると、よくお客さまに「シャンプーが欲しいのだけれど」と聞かれました。

 私はP&Gのパンテーンやヴィダルサスーンを紹介しましたが、特に郊外のお店のお客さまや年配のお客さまは、「これ?外国の?私は花王か資生堂の製品がいいな」と言われることがしばしばありました。

 最初から、外国製は目に入らないという日本人も多かったのです。

 話を戻しますが、一方のパンパースは当時マーケットではどう見られていたでしょうか。

 私はある日、売場でママたちの行動を観察していました。

 1人のママが、まず国産ブランドのおむつを手に取り、値段を確認します。次にパンパースを手に取り、数秒間見比べます。ほんのわずか5秒の沈黙です。

 その後、彼女はパンパースを棚に戻し、結局、いつもの国産ブランドをカゴに入れました。

 その5秒の間、ママの頭の中ではこうした計算が働いていたに違いありません。

「パンパースはちょっと高いな」

「このブランドは知っているけど、外国のブランドで馴染みが薄い」

「この価格の高さは、私の生活のために何がよいのかわからない」

 わずか5秒で下された判断が、購入の可否を決定づけました。

 ここにこそ、私が「壁」と呼ぶものが存在していました。

 品質は確かに国産品と同等またはそれ以上に優れていましたが、その分だけ価格は割高に映りました。

 競合の国産メーカーの商品と比較した瞬間に「大差がないなら、まあ、国産でいいか」と国内の他社品が選ばれてしまう。

 これは単なる価格差の問題ではなく、“外国産だから簡単に安心できないブランド”という距離感がもたらした心理的な壁でした。