この三重の壁が、実際のお客さまであるママの「共感」を阻んでいたのです。
加えて、日本市場全体が縮小局面に入っていました。出生数は年々減少し、紙おむつ市場はすでに成熟から縮小へ向かっていたのです。
つまり、一度でも「このブランドは買わない」と判断されれば、再びチャンスが巡ってくる確率は低い。だからこそ、ママとの最初の接点で「共感」をつくることが決定的に重要だったのです。
商品を購入するのは誰なのか?
共感されるべき相手を見極める
こうして見ていくと、パンパースが直面していた最大の課題は明らかです。
それは、「共感されるべき相手を間違えていた」ということでした。
当時のP&Gのメッセージの主語は赤ちゃん。しかし、実際に商品を購入するのは赤ちゃんではなくママです。
『一流の営業が大切にしているマーケティングの基本 4つの「ズレ」をなくせばヒットは生まれる』(來住政紀、朝日新聞出版)
もしも、赤ちゃんが「ボクは(ワタシは)パンパースの機能が好き。ママ、パンパースを買って」と言ってくれるなら別です。しかし、ママたちが求めていたのは、「赤ちゃんが快適」という当たり前の価値だけではなく、「私の育児が楽になる」「私が安心できる」という具体的なママへの価値でした。
この構造のズレを放置したままでは、いくら広告を打っても、いくら値下げしても、購買行動は動きません。
我々販売者側が「共感」すべき相手はママだったのです。私たちは長い間、そこを見誤っていました。
そこで、私は発想を大きく切り替えました。
「赤ちゃんが快適だからこそ、ママの育児が楽になる」というように、赤ちゃん視点の価値をママ視点へ通訳し直すこと。それが「共感」を生む第一歩だと確信したのです。
パンパースが抱える最大の“壁”の正体は、この「共感のズレ」だったのです。







