また、私がパンパースに携わった当初、売場には赤ちゃんの写真と「赤ちゃんが快適に」「赤ちゃんにやさしい」といった各メーカーのメッセージがあふれていました。
もちろん、これは間違いではありません。おむつの本来の役割は赤ちゃんを快適にすることですからです。
しかし、現実には多くのママたちが売場を素通りし、立ち止まってくれませんでした。
ある日、店頭で1人のママが友人ママにこう漏らしました。
「“赤ちゃんが快適”って言うけど、私は夜中に何度も起こされてツライのよね……」
この言葉が私の胸に刺さりました。
そして、さらに聞き取り調査を続けていると、ママたちには、世界共通の「赤ちゃんのためによいものを選びたい」という気持ちに加えて、生活上のいろいろな課題もあることがわかってきました。
・夜中に何度もおむつを替えるのは大変。つまり、私(ママ)は眠れない
・ゴミが増えると毎日の処理が重荷になる。つまり、毎日のゴミ出しが大変
・外出時に漏れたら困る。つまり、外でのおむつ替えや着替えは大騒ぎになる
ママたちが本当におむつや他のベビー用品に期待したのは、「子育てに関わるいろいろな課題の中で、ママ自身の生活がどう楽になるか」だと推測しました。
ところが、当時のパンパースの広告や販促資料を見てみると、「高い吸収力」「通気性がよい」「欧米ナンバーワン・ブランド」というメッセージが並んでいました。
いずれも事実であり、誇るべき強みでした。とはいえそれらは、赤ちゃんにとってのメリットを語るばかりです。
しかし、実際に購入するのはママです。メッセージが、ママ自身の生活改善の実感にはつながっていませんでした。
値段・親和性・メリット……
パンパースに立ちはだかる壁
私が整理したパンパースの“壁”は、次の3つに集約されました。
(1)値段の壁:パンパースは国産ブランドより、1パック数百円高かったのですが、その差を説明する理由が正確に伝わっていなかったのです。
(2)ブランド親和性の壁:国産ブランドはテレビCMや口コミで浸透していましたが、パンパースは「海外ブランド」という距離感が残っていました。
(3)生活でのメリットの壁:「赤ちゃんによい」は理解できても、「親のメリット」のイメージが欠けていました。







