ベストセラー著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本とは?
その本『スタートアップ芸人』の著者・森武司氏は、創業以来18年連続増収増益・年商146億円を「仲間力」一本で実現した。今回は本書に共感した社長の話。仙台を拠点に美容・コンサル等を手がける小田原宗弘社長は、畑違いの業界に飛び込んで痛感したという。「同じ売り方が、土地が変われば通用しない」。地域で全く違う商売の正解とは? (構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

東北のお客は、なぜ「一度断っても戻ってくる」のか? ――地域で全く違う、商売の正解。Photo: Adobe Stock

畑違いの業界に飛び込んで、ぶつかった壁

――小田原さんは、もともと美容業界の出身ではないんですよね。なぜ飛び込んだんですか?

小田原宗弘(以下、小田原):あるフランチャイズの本部と縁があったんです。本部の社長がSNSでの集客をすごく得意にしていて、そのやり方を学びたかった。
それと、新しいサービスって、東京や大都市から始まって、東北に来るのはいつも最後なんですよ。だったら自分が東北で一番先にやってやろう、という気持ちもありました。

――経験のない業界に入って、まず何にぶつかりましたか?

小田原:本部の研修で習った通りにやっても、まったく売れなかったんです。
最初は「自分が下手なのかな」と落ち込みました。でも、原因は別にあった。本部は九州の会社で、そのやり方は九州のお客様に合わせてつくられたものだったんですよ。
私がお店を出したのは東北。同じ日本でも、九州と東北では、お客様の気質がまったく違ったんです。それに、働くスタッフの気質も違っていました。

――「自分が下手」なのではなく、「やり方が土地に合っていなかった」と。

小田原:そうなんです。商売の正解って、土地ごとに違う。経験がなかったぶん、私はそれを素直に受け止められました。変に経験があったら、「本部の正しいやり方をやっているんだから、悪いのはお客のほうだ」と意地になっていたかもしれません。

東北のお客は、「一度断っても戻ってくる」

――東北のお客様の気質というのは、具体的にどういうものなんですか?

小田原:いちばん感じるのは、一度断られても、また戻ってきてくださる方が多いということですね。その場で「今日は決めません」と言われても、後日もう一度来てくださる。

――それは、なぜなんでしょう?

小田原:あくまで私が現場で感じてきたことですが、東北のお客様って、その場の勢いで決めるのを警戒する方が多いんですよ。
「いいですよ」とすぐ言うより、一回持ち帰って、本当に必要か、信頼できる相手かを、じっくり見極める。慎重なんです。
でも、その慎重さの裏返しで、一度「ここは信頼できる」と思ったら、ちゃんと戻ってきてくださるし、長く付き合ってくださる。

――その場で即決しないのは、関心がないからではなく、慎重に見極めているだけだと。

小田原:そうなんです。ここを勘違いすると、もったいないことになる。「断られた=脈なし」と思って、こちらから関係を切ってしまう。
でも東北では、その場で決めないことと、興味がないことは、イコールじゃないんですよ。それに、東北のお客様は、こちらの話をちゃんと最後まで聞いてくださる方が多い。むげにはしないんです。だからこそ、その場で押せば押すほど、「この人は売りたいだけだな」と見抜かれて、警戒されてしまう。

――だから、せかさないほうがいい。

小田原:はい。一度断られても、それで終わりにしない。「考えますね」と言われたら、無理に引き止めずに、また来てくださるのを待つ。次に来てくださったときに、ちゃんと話を聞ける関係でいる。そのほうが、結果的にうまくいくんです。

「土地のお客様を見る」が、すべての出発点

――よその地域だと、また違うやり方が正解になる、ということですか。

小田原:そうですね。地域によっては、その日のうちに決めてもらうスタイルが効くところもあると思います。でも東北で同じことをやると、かえって逆効果になる。どこでも通用する万能のやり方なんて、ないんですよ。だから、その土地のお客様をちゃんと見ることが、すべての出発点になる。

――全国一律のマニュアルでは、そこは拾えない。

小田原:拾えないですね。マニュアルは、あくまでどこかの地域でつくられた一つの正解でしかない。それを疑うというより、目の前のお客様が何を大事にしているかを、現場で感じ取って合わせていく。その姿勢のほうが大事なんです。畑違いの素人だったからこそ、思い込みなしに、ゼロからお客様を見られたのかもしれません。森武司さんの『スタートアップ芸人』にも、相手をよく見て関係を築いていく考え方が描かれています。新しい土地や環境で商売をする方には、参考になるかもしれません。