ベストセラー著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本とは?
その本『スタートアップ芸人』の著者・森武司氏は、創業以来18年連続増収増益・年商146億円を「仲間力」一本で実現した。今回は本書に共感した社長の話。仙台を拠点に美容・コンサル等を手がける小田原宗弘社長は社員から一度も「社長」と呼ばれたことがないという。その呼び名に隠された、組織づくりの考え方とは?(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
Photo: Adobe Stock
「社長」と呼ばれたことが、一度もない!
――小田原さんは、社員から何と呼ばれているんですか?
小田原宗弘(以下、小田原):「むねさん」ですね。下の名前が「宗弘」なので、「むねさん」と呼ばれています。実は、いまの会社では「社長」と呼ばれたことが、一度もないんです。前職ではずっと「社長」と呼ばれていましたが、起業してからは一度もないですね。
――一度も、ですか。
小田原:そうなんです。最初の社員が、友人の会社のスタッフだったんですが、そこで「むねさん」と呼んでいたのがそのまま続いて。あとから入ってきた人も自然に「むねさん」になって、先日20歳の新人の子が入ってきたときも、最初から自然に「むねさん」と呼んでいましたね。
「社長」と呼ばせる弊害とは?
――あえて「社長」と呼ばせない、ということではないんですか?
小田原:禁止しているわけではないんです。ただ、自然と「むねさん」になっている。
私自身、「社長」と呼ばれると距離ができると思っているので、それでちょうどいいんです。「社長」と呼ばれると、給料を決める人、評価する人、という関係になってしまう。そうすると、社員はこちらに本音を言えなくなる。「むねさん」だと、何でも言えるじゃないですか。
――呼び方ひとつで、そんなに変わるものですか。
小田原:変わりますね。呼び方って、関係性そのもの。「社長」「部長」と役職で呼び合う関係だと、どうしても上下ができる。上下ができると、下の人は「正解」を言おうとするようになる。本音や、自分の考えを言わなくなるんです。
9割の社長の「本音」
――とはいえ、「社長」と呼ばれることに価値を感じる経営者も多いと思います。
小田原:多いと思いますよ。むしろ、そっちのほうが普通かもしれません。やっぱり「社長」と呼ばれると気持ちいいんです。自分が立場のある人間だと確認できる。私も冗談で「こう見えても社長なんだよ」と言ったりはしますからね(笑)。その気持ちはよくわかります。
――でも、その「気持ちよさ」を手放したんですね。
小田原:手放したというより、どっちを取るか、なんですよ。「社長」と呼ばれる気持ちよさを取るか、社員が本音を言える関係を取るか。両方は手に入らない。経営者って、知らないうちに「敬われたい」「立てられたい」という気持ちを持ってしまうものなんです。それ自体は悪くない。でも、その気持ちを優先すると、社員との間に壁ができる。自分が気持ちよくなることと、組織が良くなることは、必ずしも一致しないんですよ。
――呼び方は、その象徴なんですね。
小田原:そうです。たかが呼び方ですが、そこに経営者の本心が出る。「社長と呼ばれたい」と思っているうちは、どこかで社員を下に見ているんです。だから私は、自分の自意識のほうを疑うようにしています。社員が育たないと悩んでいる方は、自分が無意識に「立場」を求めていないか、振り返ってみるといいかもしれません。
森武司さんの『スタートアップ芸人』にも、上下ではなく「仲間」として会社をつくる考え方が描かれています。部下との距離感に課題を感じている方には、ヒントになるかもしれません。




