「休んでも疲れが抜けない体質は、もう変わらないのだろうか」――その答えは、脳が大人になっても変化し続けるという事実にあるのかもしれない。睡眠、集中力、ストレス、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と音源を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、マインドフルネスが脳の構造を変える8つの領域についても書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)

【医師が解説】疲れにくい脳になる習慣・ベスト1Photo: Adobe Stock

マインドフルネスで脳の構造が変わる

――マインドフルネス瞑想を続けると、脳の「構造」そのものが変わるというのは本当ですか?

久賀谷亮氏(以下、久賀谷):本当です。「瞑想をすれば心が落ち着く」というのは誰でも想像できると思いますが、マインドフルネスの脳科学の面白いところは、一時的な心の状態だけでなく、脳の構造そのものを変えてしまう点にあります。

マサチューセッツ大学のジョン・カバット=ジンが開発した「マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)」を8週間実践した研究では、大脳皮質の厚さが増したことが確認されています。これは要するに脳の機能が高まったということです。ほかにも、脳のさまざまな部位で容積が変化したり、各部位のつながりが変化したりすることが報告されています。

マインドフルネスが変える「8つの領域」

――具体的には、脳のどんな機能が高まるのでしょうか。

久賀谷:10年にわたる21の研究をメタ解析した研究結果によれば、マインドフルネスはだいたい8つの領域で脳構造に影響を及ぼすことがわかっています。

メタ意識を司る「前頭極」、身体感覚への気づきを司る「感覚野」と「島」、記憶を司る「海馬」、自己や感情の調整を司る「前帯状皮質」、「眼窩前頭皮質」、左右の大脳半球の交通を担う「上縦束」と「脳梁」。これらの部位に統計的に有意な構造変化が見られたのです。

たとえば、海馬の灰白質密度が増加したということは、記憶に関する脳の機能が強化されている可能性があるわけです。

――マインドフルネスは集中力を高めるとよく言われますが、脳の変化も関係しているのでしょうか。

久賀谷:そう考えられます。

経験のある瞑想者は、後帯状皮質と背側前帯状皮質あるいは背外側前頭前野の連結が増していたという報告があるのです。

これは、脳のアイドリング状態であるデフォルト・モード・ネットワークの活動をコントロールできるようになっていることを示唆します。心をさまよわせることなく「いまここ」に集中でき、疲れにくい脳になっていると言えます。

「疲れづらい脳」を自分でつくれる

――脳が変わることで、疲れにくくなるのですね。

久賀谷:ええ。脳が自らを変化させる力を「脳の可塑性」と呼びます。

以前はこの可塑性は子どものころに限られると考えられていましたが、今では大人になってからも、適切な刺激によって脳は変化し続けることがわかっています。今後さらに研究が進めば、マインドフルネスは人間が自分の脳を自由に変化させるためのもっとも有効な手段となるに違いありません。