「トラブルそのものより、この先どうなるかという不安のほうが苦しい」――その原因は、心が「いまここ」から離れていることにあるのかもしれない。睡眠、集中力、ストレス、老化……など、幅広い有効性が認められているマインドフルネスを日本で最も広めたベストセラー『世界のエリートがやっている 最高の休息法』。その内容に最新研究と音源を加えた『世界のエリートがやっている 最高の休息法[完全版]』が刊行された。本書には、ウルトラ・マラソン選手に学ぶ「折れない心」のつくり方も書かれている。今回は、米国で30年以上診療を続ける現役の医師、著者の久賀谷亮氏のインタビューを掲載する。(構成/小川晶子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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苦難は将来への不安で水増しされている
――仕事の予定が狂ったり、トラブルが起きたりすると、不安に押しつぶされそうになります。どうすれば平常心でいられるのでしょうか。
久賀谷亮氏(以下、久賀谷):苦難があったとき、いかに自分を保つかは大きな命題ですが、肝心なのは「ほとんどの苦難は、将来への不安で水増しされている」ということです。目の前にあるトラブル自体は、それだけではたいしたことがないケースも多いのです。
――言われてみれば、「この先どうなってしまうんだろう」という不安が一番大きいです。
久賀谷:たいていの場合、心のレジリエンス(復元力)を超える負荷というのは、「いまここ」にはないところからやってきます。まだ起きていない未来の心配が、本来なら乗り越えられるはずの困難を、手に負えないものに見せてしまうのです。裏を返せば、「いまここ」に集中することこそが、レジリエンスを高める最も良い方法です。
ウルトラ・マラソン選手に学ぶレジリエンス
久賀谷:ウルトラ・マラソンという競技をご存じですか? 代表的なのは100kmといった長距離、あるいは10時間など長時間を走る過酷な競技です。この競技に臨むアスリートたちのメンタリティは、レジリエンスの本質に通じるものがあります。継続性や好奇心、失敗への恐れのなさ、大胆さなどさまざまに指摘されていますが、とくに興味深いのが「目前の1歩1歩にフォーカスする力」です。
――遠いゴールをあえて見ずに、1歩1歩進めるのですね。
久賀谷:ええ。あまりにも長く苦しい競技を最後まで走り抜くためには、遠い先を見ずに、いまここにフォーカスする能力が重要になります。これはビジネスの現場でも同じです。大きなプロジェクトの困難に直面したとき、完成までの長い道のりを見渡せば見渡すほど、心は折れやすくなります。「いまこの一歩」に集中できる人こそが、最終的にゴールに辿り着けるのです。
マインドフルネスは「走りながら休む」技術
――「いまここ」に集中する力は、マインドフルネスで鍛えられるのでしょうか。
久賀谷:はい、まさにマインドフルネスの目的のひとつがそれです。
過去の失敗を悔やんだり、まだ来ていない未来を不安に思ったりする脳のクセを手放し、いまここにある現実だけに意識を向ける。マインドフルネスは「走りながら休む」ための最高の技術だと言えます。困難な状況に直面したとき、まずは呼吸に意識を向けて「いまここ」に戻るようにしてみてください。その小さな習慣が、折れない心をつくっていくのです。



