どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊『客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます。
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「40分かかります」という一言が、
同じ鰻を別の味にする理由
老舗の鰻屋に入り、注文を告げると「お時間、40分ほどいただきます」と言われる。長いな、と思いながらも待つことにする。お茶をすすりながら、厨房から漂ってくる炭の香り。10分、20分と時間が経つうちに、「もうすぐ来る」という期待が静かに高まっていく。
運ばれてきた鰻重のふたを開けた瞬間の、あの「待ってよかった」という感覚。ファストフードでは絶対に生まれないあの満足感は、どこから来るのでしょうか?
実はこの「待ち時間の告知」は、提供が遅いことへの謝罪や説明責任のためだけではありません。待つという体験そのものを、価値を高める演出に変えるための、精密に設計された販促の仕掛けなのです。
「待った分だけ、美味しく感じる」という脳の仕組み
(期待の醸成と予期の快)
人は、楽しみなものを「待つ時間」そのものに快を感じることが知られています。行動経済学では「予期の快(待つこと自体がもたらす満足)」と呼ばれ、旅行が出発前から楽しいのと同じ仕組みです。
さらに、こうして高まった期待は、実際の体験の評価そのものを引き上げます。「美味しいはずだ」という期待を持って口にした料理は、同じものでもより美味しく感じられやすい。待つ時間が長いほど期待値が積み上がり、目の前に置かれた瞬間の感動が増幅されるのです。
さらに、待ち時間の告知には「注文を受けてから一尾ずつ焼き始める」などの職人の仕事を連想させる効果があります。「今まさに自分のために作られている」という意識が、待つ時間を退屈な空白ではなく、期待が育っていく能動的な時間に変えます。
40分という具体的な数字もまた重要です。
「しばらくお待ちください」という曖昧な表現では不安が生まれますが、「40分」という明確な告知は、ゴールの見えた待機になります。ゴールが見えた状態では、待ち時間そのものへのストレスが大幅に下がり、その間に積み上がる期待感だけが残るのです。
「手間がかかること」の可視化が、価格への納得を生む
(労働価値の内面化と希少性の原理)
もう一つの理由は、長い待ち時間が「それだけの手間がかかっている」という事実の証明として機能するという点です。
ファストフードの鶏肉と、職人が丁寧に捌いて炭火で丁寧に焼いた鰻。価格の差を「なぜこんなに高いのか」と感じる人も、40分という待ち時間の事実を前にすると、「それだけの時間と手間をかけているのだから」という納得が自然に生まれます。
待ち時間は、目に見えない職人の労働を「時間」という誰もが理解できる単位に置き換えて可視化する装置です。
さらに、「注文を受けてから一尾ずつ」という提供方式は、同時に大量提供ができないという希少性のシグナルでもあります。「今この瞬間、自分のためだけに作られている一品」という感覚が、価格への抵抗を溶かし、特別な満足感を生み出すのです。
他のお店でも使える
「待ち時間を価値に変える」設計
・オーダーメイドのケーキ店
「ご注文から3日いただいております」という告知とともに、製作過程の写真をLINEで途中報告する。待ち時間が「自分のために作られている実感」の積み上がる時間に変わり、受け取ったときの感動と価格への納得が最大化する。
・本格手打ちそば・うどん店
「本日の打ちたては◯時以降のご提供となります」と告知する。特定の時間を目指してわざわざ来る行動が生まれ、それ自体がその店への関与と期待を高める。混雑の平準化という運営上の利点も同時に得られる。
・注文家具・クラフト作家
「お届けまで6週間」という納期とともに、制作工程の写真や動画を定期的に送る。長い待ち時間が「職人が今まさに自分のために作っている」という実感の連続になり、完成品を受け取ったときの「エンダウメント効果(所有感と愛着)」が通常より大幅に高まる。
まとめ
老舗の鰻屋が待ち時間をあえて伝えるのは、正直なサービスや過度な期待を持たせないための配慮だけではありません。
・「期待の醸成と予期の快」により、明確な待ち時間の告知が期待を積み上げ、受け取った瞬間の満足感を増幅させ
・「労働価値の内面化」により、時間という単位で可視化された職人の手間が、価格への納得感を自然に作り出し
・「希少性の原理」により、今この瞬間自分のためだけに作られているという感覚が、特別な一品としての価値評価を高める
という、待ち時間そのものを最高の価値演出ツールに変えてしまう、老舗ならではの販促戦略なのです。
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
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業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
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『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。




