大木は、クイズマニアを紹介する本では「クイズ界の影の人事部長ともいうべき人で、クイズマニアの人脈に通じ、誰がどの番組で勝った、今度AとBが対戦するが、まずAの勝ちだなどと、実に人事をつかんでいました」と書かれており、プレイヤー事情をよく把握していたことがわかります(注1)。
さきほど述べたとおり、『史上最強』の立ち上げには道蔦が深く関わっていました。ここには、出題者と解答者による一種の共犯関係が成立します。ただし「共犯関係」と言っても、やらせのような直接的な不正を指すわけではありません。どういうことでしょうか。
一般の視聴者にはわからないが
クイズ王なら解答できる問題を選ぶ
そもそもクイズは多くの場合、答えられるために作られています。『史上最強』では一般視聴者にとってはかなり難しい問題群が出題されていましたが、しかしいかに難問と言っても、出演者がまったく手も足も出ないような設問ばかりでは番組として成立しません。それに対して、一般の視聴者にとってはまったく未知の難問であるものの、クイズプレイヤーのあいだではあるていど共通知識とされているような事項を問えば、クイズ王たちをより超人的な存在として演出することができます。
さらに早押しクイズの場合、「確定ポイント」が問題文の早い箇所に来るように設計すれば、解答者がボタンを押す箇所はより早くなります。確定ポイントというのは百人一首でいうところの「決まり字」のようなものだと思ってください。こういった決まり字が意識されていること自体、クイズの問題文が一定の形式で固定化されていたことの証左と言えるでしょう。
たとえば『史上最強』では、クイズ王たちが披露する早押しのスピードが全面的に強調され、問題が読み始められると同時に、画面隅でストップウォッチが回りはじめ、いったい何秒でボタンを押したのかがわかるような演出が取り入れられていました。
(注1)北川宣浩『TVクイズ(金)必勝マニュアル』、サンケイ出版、1985年。引用は著者サイトによる全文公開より。URL=https://kitagawa.tv/quiz/tvqm/tvqm02-05.htm







