反戦と平和への強い願いを
「こんにちは」にこめていた
1970年の大阪万博のテーマソング「世界の国からこんにちは」(発売されたのは1967年)からみていきましょう。この歌を作詞したのは詩人の島田陽子(1929-2011)です。
35回も出てくる「こんにちは」という言葉のあたたかさやのどかさから、なかなか気づけないと思いますが、戦争体験者である島田さんは、この歌に反戦と平和の願いを込めています。
『東京新聞』の「100年の残響 昭和のうた物語〈17〉」(2025年7月13日)によれば、島田さんは後年、「世界の国からこんにちは」を作った背景を「私の世代としては、戦争は本当に体に染みついて、嫌なことなんです。憎むべきことなんです。戦争反対とあらためて言わなくても、私の詩の根底にそれは流れていると思うんです。そのことを歌の中でも歌いたかった」と振り返っています。
また、万博についても「平和だからこそ万博も開ける。その平和というものは良い平和であれ、悪い平和であれ、私にとってはうんと大切なもの。その思いを小学生だった子ども二人に伝えたいと、誰にでもわかりやすい言葉で書いた」と想いを語っています。
「良い平和」はともかく、「悪い平和」でさえも「私にとってはうんと大切なもの」という島田さんの言葉には、体験者にしか語れない迫力と重みがあります。
先に日本の平和が訪れた「戦後の明暗」と書きましたが、それは戦争を知らない世代の私だからこそ、口にできたことなのかもしれません。個人の人生も世界情勢も複雑を極める現実では、迂闊に善悪を分けることはできませんが、たとい「悪い平和」であったとしても、ひとまず平和だからこそ万博が開ける。その万博が開かれている世界の中には、涙を流して絶望している人もいるかもしれない。
それでも、あるいはだからこそ、せっかくの万博という晴れ舞台で声を大にして歌われる言葉にあえて「こんにちは」という挨拶と「握手をしよう」というやさしい命令文をいれた島田さんの願いを熟読玩味したいものです。







