エネルギー危機、インフレ、人手不足で明暗!通期決算「勝ち組&負け組」【2026春】#12Photo:PIXTA

訪日客効果による運輸の底支えや不動産ビジネスで業績が比較的堅調な鉄道業界。ただ、稼ぎ頭の不動産ビジネスをアクティビストが狙う動きが出てきている。特集『エネルギー危機、インフレ、人手不足で明暗!通期決算「勝ち組&負け組」【2026春】』の本稿では、私鉄各社の不動産の「稼ぐ力」に加え、不動産資産に比べて株価が割安な私鉄を明らかにする。次にターゲットになる可能性があるのはどこなのか。(ダイヤモンド編集部 宮井貴之)

関西私鉄は万博効果で大幅増益も
不動産事業に迫るアクティビスト

 2026年3月期の主要私鉄決算は東西で明暗が分かれた。下表が主要私鉄の26年3月期決算だ。

 関東の私鉄は8社中6社で営業利益が前期比で減少した。東急は、ホテル・リゾート事業は訪日客需要で一室単価が上昇するなど好調だったが、交通事業が人件費の増加や修繕費用がかさんだ影響で微減となった。西武ホ―ルディングス(HD)はホテル業の宿泊者数が伸びたものの、前期に東京ガーデンテラス紀尾井町を売却した反動減で、大幅減益となった。

 一方、関西の主要私鉄4社はいずれも増益となった。特に阪急阪神ホールディングス(HD)や京阪HD、NANKAIは大幅増益だった。

 25年4~10月に開催された大阪・関西万博効果で、各社主力の運輸業やホテル事業が全体の業績をけん引。阪急阪神HDに関しては阪神タイガースの優勝効果も利益の押し上げ要因となった。

 東西の私鉄で明暗が分かれた格好だが、各社のビジネスモデルが大きく変化したわけではない。近年、鉄道各社は本業の運輸ではなく不動産で稼ぐビジネスに力を入れてきた。

 例えば、阪急阪神HDの都市交通セグメントの営業利益は前期比0.5%増の352億円だったのに対し、不動産セグメントの営業利益は16.5%増の671億円に上る。東急も営業利益は交通事業よりも不動産事業が大きく上回る。関西の私鉄が万博などの特需を享受した形だが、私鉄各社は不動産ビジネスが稼ぎ頭なのだ。

 ところが、そのビジネスモデルが揺らぐリスクが出てきている。それがアクティビスト(物言う株主)の存在だ。今年5月、村上世彰氏の長女の野村絢氏が近鉄グループHDの株式2.7%を取得したことが判明。続いて京阪HDや名古屋鉄道などの株式も相次ぎ取得していることが明らかになったのだ。

 野村氏の狙いは不動産とみられている。鉄道会社は優良な不動産を抱えるものの、株価が割安に放置されているケースが少なくない。コングロマリットディスカウントの解消や資本効率の改善を促すための不動産事業の分離など思い切った提案も出す可能性がある。先細る運輸収益を補うために育ててきた“虎の子”の不動産ビジネスが狙われているのだ。

 では、私鉄各社の不動産事業の「稼ぐ力」はどのぐらいあるのか。次ページでは、26年3月期の財務データを基に各私鉄の稼ぐ力を明らかにするほか、保有する資産に対して株価が割安な私鉄も明らかにする。アクティビストに狙われかねない私鉄はどこなのか。