Alexandra Citrin-Safadi/WSJ
中国トップの半導体メーカー華為技術(ファーウェイ)は昨年夏、同国のテクノロジー政策トップ向けに非公開の説明会を開き、最新の人工知能(AI)チップを披露した。同社は米半導体大手 エヌビディア に対抗する計画を示し、中国が3年以内にAIの主要分野の一部で自給が実現できるとの見通しを明らかにした。
これはまさに、中国の習近平国家主席の側近である丁薛祥筆頭副首相が聞きたかった内容だった。3年前、米政府は中国による最先端AIチップやその製造に必要なツールへの アクセスを制限した 。これはテクノロジー大国としての中国の野望に壊滅的な打撃を与えかねないものだった。習氏の承認を得て、丁氏は国産代替品の開発に向けた精力的な取り組みに乗り出した。
丁氏は、ソ連との対立が生じた1960年代に中国が初の原子爆弾、水素爆弾、人工衛星の開発で用いた「総力戦」の手法を引っ張り出した。国内トップクラスの企業や研究機関から人材を集めて専門チームを編成する委員会を立ち上げ、半導体サプライチェーン(供給網)の各工程を掌握するよう指示した。
ファーウェイからの進ちょく報告は、より積極的な姿勢に踏み切る余地を丁氏に与えた。事情に詳しい関係者によると、同氏は中国の主要AIユーザーに対して率直な警告を発した。国産チップの採用に抵抗する者は誰であれ裏切り者である、と。
ファーウェイは5月、AI計画の詳細を公表した。モルガン・スタンレーのデータによると、同社はすでに中国の外国製AIチップへの依存度を2021年の90%から2025年には60%未満に引き下げる取り組みを主導しており、最新の設計によって今後5年間でその割合を25%まで低減できる可能性がある。さらにファーウェイは、最高水準の製造装置を使わずに最先端に近い半導体を製造する代替手法を編み出したとしている。
「米国がわれわれの国や企業、産業を追い詰めていなければ、こうした措置を講じることは決してなかっただろう」と、ファーウェイのエリック・シュー副会長は語った。
AIソフトウエアの分野では、中国が米国に予想外の追い上げを見せている。北京を拠点とするスタートアップの月之暗面(ムーンショットAI)は先週、米AI大手オープンAIとアンソロピックのトップモデルに迫る性能を持つ新モデル「Kimi K3」を発表した。習氏は、中国をオープンでアクセスしやすいAIの世界的な旗手として位置づける演説を行った。米半導体メーカーの株価は 下落した 。
一方ハードウエアに関しては、ファーウェイの最近の進歩をもってしても中国は依然として米国に大きく後れを取っているほか、半導体製造能力の問題が、中国企業が望むペースでAIを運用するのを妨げている。ムーンショットAIはK3の発表からわずか2日後、計算処理能力が十分でないとして、プレミアムサービスの新規受付停止を余儀なくされた。
米国に追いつこうとする中国の取り組みの行方は、世界経済に大きな影響を及ぼす。米国が最先端技術を掌握すれば、世界各国は、兵器や軍事戦略の分野は言うまでもなく、医療、ロボット工学、自動運転といった分野で進展を遂げる上で、米政府の意向に頼らざるを得なくなる。AI技術の進化はハードウエア、特にAIモデルを訓練し日常的なタスクの処理を支える半導体に依存している。
電気自動車(EV)とバッテリーで西側諸国を追い抜いた実績から、中国では最終的に半導体技術における米国の支配を打ち破れるという自信を持つ人が多い。だが半導体は他のハードウエアとは異なる。その技術は極めて複雑であり、目まぐるしい速度で進化している。







