150年の中華料理史がある日本で
なぜ今「ガチ中華」なのか

 私が思うに、ガチ中華に詳しい人は主に2通りに分類できる。1つ目は中国と関係なく、とにかく中華料理が大好きで、あちこち食べ歩いた結果、ガチ中華にもハマった人。

 2つ目は中国に留学や駐在の経験があったり、中国関係の仕事をしていて、中国がらみのトレンドに敏感な人だ。

 後者は周囲も似たような人や同僚、業界関係者が多いため、会食は中華料理というチョイスになる。その際、評判のガチ中華を選択する。

 私はどちらかといえば後者だ。ガチ中華を食べに行って店内を見渡すと、“少数派”の日本人はたいてい元駐在員や元留学生だったりする。

 日本では世界最大級のチャイナタウンである横浜中華街が横浜開港(1859年)を機に誕生し、中華料理の歴史は150年以上ある。しかも、日中間の往来が活発になって久しいのに、なぜ今になって「ガチの中華料理」が流行し始めたのか。

 それ自体、おかしな話ではないかと思うが、すでに多くの人が知っている通り、日本の中華料理は、「日本風にアレンジされた、本場中国とは少し異なる中華料理」だ。

 つまり、私が田舎の中華料理店で食べていた中華は、日本風にアレンジされたもので、中国の人々が食べている料理とは異なるものだった。それはそれで、長い間、日本人の口に合うように少しずつ改良され、ずっと日本人に愛され続けてきたのでよいと思うが、それとは一線を画す料理が「ガチ中華」だ。

 現在、ガチ中華は東京、埼玉、神奈川、千葉などの首都圏を中心に、少なくとも1000店舗以上あると言われている。中でも池袋は「ガチ中華の聖地」で、それを猛烈な勢いで追い上げているのが上野、御徒町、高田馬場などだ。

 ただ、ガチ中華全体の正確な数はわからない。店の入れ替わりが激しいことに加え、ガチ中華の定義や、ガチとガチ以外の境界線があいまいなので、正確にカウントしにくいからだ。

 それに、ある人が、ある店のある名物料理を食べて「これはガチだ」と思っても、それは個人の主観という可能性もなきにしもあらずだ。