この病気の発症原因は不明で完治させる方法もないが、病状のメカニズムそのものは解明が進んでいる。現在は免疫抑制剤や生物学的製剤などを投与して進行を食い止め、寛解状態に持ち込むことが可能になるほど治療技術が進歩しているが、病気の進行を食い止めて寛解状態を維持するためには、一生にわたって生物学的製剤などの投与を継続する必要がある。
生物学的製剤とは、バイオテクノロジーを用いて製造された分子標的治療薬で、この大仰な名前からも類推できるとおり、それなりに高価な薬剤だ。2000年代以降に治療現場で使用されるようになり、現在は点滴や自己注射などの方法で投与する生物学的製剤が日本国内で10種類ほど承認されている。筆者自身を例に挙げると、2009年からTNF-α阻害剤のレミケード(インフリキシマブ)という生物学的製剤を点滴治療で使用している。ちなみに、故・安倍晋三氏も自己免疫疾患の一種である潰瘍性大腸炎の罹患を生前に公表していたが、この治療でもレミケードを使用することが多いようだ。
関節リウマチ患者の
治療を支える制度
このような生物学的製剤はじつは世界でも非常に多く普及しており、五十嵐特任准教授によると2023年に世界で最も売上額が高かった薬は、高価な抗がん剤として知られるオプジーボでも世界中の人々が接種した新型コロナウイルスワクチンでもなく、関節リウマチなどの自己免疫疾患に投与される生物学的製剤のヒュミラだったのだという。
「オプジーボが肺がんでの承認を得て、日本でも広く使用され始めた2016年ごろは『ひとりに1年間使うと3500万円かかる』と言われて話題になりましたが、実際の投与期間は一般的に数カ月程度です。一方で関節リウマチなどに使用する生物学的製剤の場合は、今年始めた人や去年始めた人、あるいは10年前から使用し続けている人などがいて、それが一生ずっと続くわけです。
そうすると、値段と投与人数と使用期間を[縦×横×高さ]として考えたときに、薬剤全体の中でも生物学的製剤はじつはかなり大きなボリュームを占めており、同様に患者さんの負担もかなり大きいことがわかります。つまり、高額療養費の制度を変更すると、がん患者だけではなく、関節リウマチなどの自己免疫疾患に罹患している人々も大きな影響を被ることになるわけです」







