酸素マスクをつけて横になる子ども写真はイメージです Photo:PIXTA

日本の医療は質が高く、患者負担は驚くほど抑えられている。だが、その手厚さは、制度の想定を超えた使われ方を招く可能性もある。外国人患者診療の現場に立つ医師が、医療制度の“善意”が抱える危うさを明かす。※本稿は、東京大学医学部附属病院国際診療部副部長の山田秀臣『外国人患者:医療ツーリズムと日本の現実』(新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

大企業で働く外国人の中に
散見されるケースとは?

ある病院のナースステーションで

看護師A「今度入院するXちゃんのお父さんは外資系企業で働いている外国人のビジネスマンで、英語対応が必要だって主治医の先生から聞いたけど」

看護師B「それは大変だあ。でも彼らにしたら、子供の心臓の手術を海外で受けるわけでしょ? 頑張って私たちもサポートしないとね。あ、先生が来た」

主治医「さっき、日本は無料で子供の治療が出来る素晴らしい国だとXちゃんのお父さんに褒められてね……。嬉しいけど、なんかモヤモヤするね。確かに自治体からの補助で子供の治療は無料だから、うちもお金は入るし助かりはするけど……」

 東京には外資系やIT系、商社など多くのグローバルカンパニーが集まる。外国語を話しながら丸の内を闊歩するビジネスパーソンを見かけることも日常の風景だ。

 こうした外国人が得ている日本の在留資格のほとんどは家族帯同が可能で、家族と一緒に日本で生活することが多い。就労が可能な在留資格のうち家族帯同が許されていないのは「技能実習」と「特定技能I」、そして「留学」の一部である。

 ところが大企業で働く外国人の中には、病気の子供の治療が目的で日本に来たのではないかと思われるケースが散見されるのだ。