がんと違って関節リウマチなどの自己免疫疾患は、患者数が多い割に深刻な疾病として話題に上りにくい。そのため、実態が世間では広く共有されておらず、病気に対する一般的な理解もがんほどには周知されていない。そのような事情を考えれば、高額療養費制度を利用している関節リウマチ患者のこのような定量化は画期的といっていいだろう。

費用を理由に高額な薬を断念
統計に表れない患者も

 関節リウマチは患者数が全国で約70万~80万人と言われているものの、厚労省指定難病ではないため、治療に際して特別な医療費助成や支援は一切ない。がんの場合は民間の生命保険も充実しており、加入者が罹患した際にはその保険から一時金などの保障額が治療費として給付されるが、関節リウマチに罹患してもそのような保障がなく、むしろ生命保険の加入そのものを断られる場合も少なくない。

『高額療養費制度』書影高額療養費制度』(西村 章、集英社)

 五十嵐特任准教授の「縦×横×高さ」の説明でもわかるとおり、関節リウマチは一生にわたって高額な負担が続く疾患だが、治療に際して世間からは見えにくい金銭的な困難や苦労を強いられる場合も多い。その事実を念頭に置いて改めて[図9]を眺めてみると、高額療養費制度によって救済されている関節リウマチ患者が多い一方で、この救済から漏れている「見えない人々」、つまり、経済的な理由や家庭の事情などで受診抑制を強いられているためにこのグラフに数字として表れない人々が一定数いるのではないか、ということも想像できる。

 実際に、今もSNSなどを通じて、「収入と治療費を天秤にかけてみたところ、効果は高いとわかっていても、金銭的な理由から生物学的製剤の使用に踏み切れない」という声はよく目にする。金銭的な理由、というのは、たとえ高額療養費制度を適用されたとしても「縦×横×高さ」の説明でわかるように、一生にわたって治療を続ければ費用はかなりの高額に達するため、その負担の継続に踏み出すことに躊躇してしまう、ということがひとつ。

 もうひとつは、生物学的製剤やそれ以降に承認されたJAK阻害剤と言われる効果的な薬剤を使用した月の3割負担額が、投与量や使用方法などによって高額療養費制度の自己負担上限額よりもごくわずかに低い金額になってしまうことがある。そのような場合は、高額療養費制度の恩恵を受けることができず、制度の利用者数統計にも反映されない、というわけだ。