工場だけじゃない、「売り方」も大改革

フォードのすごいところは、自動車を「つくる」仕組みだけでなく、「売る」仕組みまでも変えてしまった点にあります。

当時、自動車の販売は地域の小さな販売店に任せきりで、メーカー側が値段や接客の質をコントロールするのは難しい状態でした。

そこでフォードは、現在ではおなじみの「フランチャイズ制度」を導入します。全国に「フォード専門の販売店」を展開することで、どこのお店でも統一されたブランドイメージと、質の高いサービスを提供できるようにしました。これにより、T型フォードはアメリカ中にあっという間に広まっていきました。

1500万台の大ヒット!「自動車社会」の幕開け

こうした「つくる」と「売る」のダブルの革命に支えられ、T型フォードは1927年の生産終了までに、なんと累計約1500万台という驚異的な売り上げを記録しました。この大記録は、1972年にフォルクスワーゲンの「ビートル」に抜かれるまで、世界トップの座に君臨し続けたのです。

T型フォードの登場は、ただの「自動車のヒット」ではありません。一部のお金持ちの道楽だった自動車を、「誰もが当たり前のように乗るもの」へと変えた、社会の大きな革命でした。

イノベーションの種は「みんなに届けたい」という思い

作業の分担やマニュアル化といったフォードのアイデアは、形を変えながら、現代の私たちの生活を支える「大量生産・大量消費」の土台となっています。まさに、歴史を変える大発明(イノベーション)でした。

ここで興味深いのは、この大革命の出発点が「もっと安く、もっと多くの人に届けたい」という純粋な思いだったことです。その夢を叶えるために、つくり方や売り方をゼロから見直した結果、世界を変える仕組みが生まれました。

これは、現代のパソコンやスマートフォンの普及にも同じことが言えます。どんなにすごい技術をつくっても、それを「みんなが使える仕組み」にしなければ、社会は変わりません。

「日本にはイノベーションが足りない」といわれる現代。だからこそ、今一度原点に立ち返り、「どうすればもっと多くの人の役に立ち、喜んでもらえるだろうか?」という視点から、新しい商品やサービス、そして仕組みづくりを考えていきたいものです。