史実を知るとハッとする…『風、薫る』実在モデル・大関和が感染症の現場で優先したこと〈風、薫る第92回〉『風、薫る』第92回より 写真提供:NHK

今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラに関する著書を2冊出版し、毎日レビューを続けて12年めの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は第92回(2026年8月4日放送)「風、薫る」レビューです。(ライター 木俣 冬)

未曾有の感染症発生→「一番大事な穴」とは?

 第92回は、ラストが胸熱。疫病というシビアな題材なので、なにか大きな事件があると盛り上がると感じてしまうのは不謹慎なのだが、やはり主人公が窮地に立ち向かう話には求心力がある。

 ラストの展開をいきなり記すのは憚れるので、後述するとして、そこに至るまでを順を追って見ていこう。

 アサ(美山加恋)が避病院(伝染病専門の隔離施設のこと)に行くことになった。外に出ると、たむろっている村人たちが、口々に非難する。

 太助(板橋駿谷)が村八分になりそうなので、黒川(平埜生成)がかばう。

「いいも悪いもありません。これは医者であるこの私が決めたことです」

 すべてを引き受けようとする黒川。頼もしい。帝都医大病院でも徐々に善人なところを表していたとはいえ、別人かと思うような医者の鏡みたいなキャラになっている。いっそ、新潟編で出会った新たな医者を設定しても良かったのではないか。いや、平埜生成は新潟の黒川のほうがニン(歌舞伎でいう、役と俳優の特性が合っていること)である。

 そこへ村長(大高洋夫)が苦虫をかみ潰したような顔で出てきて、医者は信用できないし、余計なことをして村のまとまりが悪くなる、村のことは村でやりたい(大意)というようなことを言う。

 小さな共同体では同調圧力によって集団をまとめがち。はみ出す人がいないように固めていくものなのだ。

 黒川たちが持参した鍬を見て、墓穴を掘るために持っていくのだろうと嫌味を言う。ドラマの序盤、栃木編でも語られていたように「避病院」は「死病院」と言われ、行ったら最後治るものが治ることなく死ぬだけと恐れられていた。

 りん(見上愛)は鍬を抱えて言い放つ。

「みんなが生きるために使う鍬です」
「みんなが毎日使う一番大事な穴を掘るんです」

一番大事な穴とはなにか?