「ビールは太るから焼酎にしている」「糖質ゼロのお酒なら安心」。健康を気遣って、そんな選び方をしている人は多いだろう。しかし、それだけでは十分ではない。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の専門家として知られる医師・下村健寿氏が警鐘を鳴らす、「認知症リスク」を高めるお酒の習慣とは?(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
※本稿は、下村健寿『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の一部を引用・編集して作成した記事です

「認知症」になりたくないなら今すぐやめるべき「お酒の習慣」・ワースト1Photo: Adobe Stock

アルコールが「脳」に与える意外な影響

「米や大麦(小麦)から作られる日本酒やビールは血糖値を上げやすいから飲まない方がいい」
「蒸留酒であるウィスキーや焼酎は糖分がないから血糖値が上昇しない」

など、健康に気を遣いながらお酒を楽しんでいる人は多いのではないだろうか。

実際、アルコールは人体に様々な影響を及ぼす。

そのなかでも、あまり知られていないのが「脳」への影響だ。

元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する下村健寿氏は著書『糖毒脳』のなかで、このように指摘している。

まず大前提として、お酒の飲みすぎは脳に悪い影響しか与えません。
 

フランスで2018年に行われた大規模調査によれば、アルコール過剰摂取の診断を受けた人は、そうでない人と比べて認知症発症リスクが3・3倍も増加していたことが明らかになりました。
(下村健寿著『糖毒脳』より)

「血糖値の上昇」が認知症リスクを高める

なぜアルコールの過剰摂取によって、認知症リスクが高まるのか。

その要因の1つとして考えられるのが、「血糖値」への影響だ。

アルコールに含まれる糖質によって血糖値が上がると、それを下げるためにインスリンが分泌される。

しかし糖の過剰摂取が続くと、やがてインスリンが出づらくなったり、効き目が落ちたりしてしまう。

インスリンは脳内で「学習」や「記憶」を司る脳神経細胞同士の情報伝達をスムーズにしたり、アルツハイマー病の原因となる「アミロイドβ」などによる攻撃から脳神経細胞を守る役割も果たしている。

そのため、アルコールに含まれる糖質を摂りすぎると、脳を守るインスリンの分泌に異常がおきるため、結果として脳の認知症リスクを高めてしまうのだ。

下村氏の著書では、上記の解説を交えながら、糖質を含め、糖の影響により認知症に向いつつある状態の脳を下記のように呼び、警鐘を鳴らしている。

過剰な糖によって脳が毒された状態を、私は「糖毒脳」と呼んでいます。
(下村健寿著『糖毒脳』より)

では、「血糖値を上げないお酒」なら大丈夫?

「それなら、ウイスキーや焼酎のような、糖分が少ないお酒なら問題ないのでは?」

そう思ったかもしれない。

しかし、本当の原因はそこではないと、下村氏は指摘する。

そして血糖値の観点から言うと、確かに日本酒とビールの方が若干、血糖値を上げやすい傾向はありますが、ウィスキーや焼酎とそれほど大きな差はありません。
 

お酒を飲んだときの血糖値上昇の主な問題は、お酒そのものではなく、一緒に食べる「つまみ」にあります。
(下村健寿著『糖毒脳』より)

多くの人は、お酒とともに食事を楽しむのではないだろうか。

じつはここに、お酒の落とし穴があるという。

お酒は脳に働きかけ、満腹感を司る「満腹中枢」を麻痺させてしまうため、いくら食べても「満腹だ」と感じにくくなる。

その上、ビールなどは胃腸の動きを活発にするので、胃の中に入った食べ物が速やかに腸へと移動し、結果的に多くの食べ物を摂取できるようになる。

つまりお酒を飲んだときは、いつもより多くの量が食べられるようになっているわけだ。

これでは血糖値が上がるのも当然である。

いますぐやめてもらいたい「シメのラーメン」

その観点で、下村氏が最も危険視しているのが、お酒を飲んだ後の「シメ」だ。

実際、いつもより多く食べているはずなのに、お酒を飲んだあとはどこか小腹が空いた気がしますよね。家に帰る前に「最後のシメ」と称して、炭水化物(ラーメンや雑炊、お茶漬けなど)を食べたくなってしまいます。
 

でも、冷静に考えてみてください。酔っていなかったら、深夜にラーメンなんか絶対に食べられませんよね。お酒の力によって、食べた物が胃から腸に流され、さらには脳の満腹中枢が麻痺しているためです。
(下村健寿著『糖毒脳』より)

ウィスキー、焼酎、日本酒、ワイン……何を飲んでも血糖値への影響にそれほどの差はない。

問題は、一緒に食べるものなのだ。

下村氏は読者へのアドバイスとして、こう締めている。

お酒はたまに嗜む程度にして、飲むときはできるだけサッパリしたおつまみを選び、糖質を摂らないように心がけましょう。
 

そして、最後のシメは絶対にとらないこと。友人たちに誘われたら、迷わず走って逃げてください。これが、アルコールとの賢い付き合い方です。
(下村健寿著『糖毒脳』より)

お酒は楽しんでも、「シメ」の食事は避ける。

将来的な認知症リスクを下げたいと考えるなら、覚えておいて損はないだろう。

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。