そこで、実家とのアクセスを考えて進学を検討していた東海道新幹線沿いの名古屋市や都内の大学を候補から消した。

 鉄道好きだった。ある時、戦後の新幹線の開発に航空設計の技術者たちが関わっていたことをテレビで知る。金沢工業大学で航空技術にアプローチすることで、新しい発見があるかもしれないと夢を膨らませた。

 学部の1、2年のうちは、数学は数理工教育研究センター、英語は基礎英語教育センターを頼った。「フォローアップがとてもよいなと思った。臨機応変に対応してくれたのが印象に残っています」。図書館にはライティングセンターがあり、国語の教員から文章の添削を受けたという。

学生がつまずく部分をAIで分析し
ケアの個別最適化が実現可能に

 金沢工業大学ではスマートフォンや携帯電話で学生の質問を受け、48時間以内に解答にたどり着くヒントを返信している。また、学生ごとの成績や習熟度のデータを、情報工学の教員が中心になってAIで約800項目に解析。学生がどの段階でつまずくのかを把握し、修学指導につなげる。

 例えば、修学から4週目ぐらいに小テストが始まり、8週目ぐらいから出席率が悪くなる学生がいたとする。こうしたケースが退学につながりやすいかどうかを、学生らのビッグデータから把握することが可能だ。

 大澤学長は「その学生は能力がないのではなく、教員が出す課題にパンクした状態でオーバーフローとなって、『もう無理です』と投げ出しているだけ。科目のどこでつまずいたかがわかるので、緊急全学部会を開いて調整を始める。パンクしているところを把握して指導できる」と話す。

 こうした事例を90%以上の確率で的中させ、すでに実証実験を済ませた。「実験結果を元に、つまずいた学生がいたら、ここに注意してください、と教員にフィードバックできるようになった。かつては、退学はやむなし、とあきらめることがあったが、ケアすることで個別最適化が実現できるようになった」とする。

 金沢工業大学といえば、かつては厳しい教育についていけず、退学率が高いことで知られていた。だが、学生を活かすことを優先する教育に切り替えたことで、退学者の減少につながった。