出口は、Xperiaのスマートフォンとブラビアのカラーテレビである。Xperiaは決して好調な事業とは言えないが、毎年新機種を発売しており、ブラビアはTCLとの合弁事業に移管するが49%も出資している。

 かつてソニーがVAIOを売却したときや、東芝がREGZAや東芝家電を中国メーカーに売却したとき、あるいは日立が家電をノジマに売却したときは、どれも自社の持株比率を5~20%にまで引き下げ、実質事業から手を引いている。一方、ブラビアの場合、メジャーこそTCLの51%だが、本気でテレビを止めるつもりならソニーはもっと持株比率を下げてもいいはずだ。49%も持ち続けるということは、これからもエンタテインメントの出口としての大型ディスプレイをソニーブランドで継続したい証であり、ソニーはエレクトロニクスの分野でも注力すべきところには注力していると言える。 

カメラでトップを本気で狙うとき
ソニーに足りないものとは

 一方、エンタテインメントの入り口であるカメラ事業は、ソニーのハードウエア事業の中でも好調な事業であり、より積極的に投資をすることで、本気でこの分野のトップを取りに行こうとしているように見える。

 そうしたときに、ソニーに足りないものは何か。それがタムロンが得意とするレンズ製品ラインアップだと筆者は考える。ソニーは、コニカミノルタからαの事業を引き継いだときから、レンズを大切にしている。以前、筆者がソニーの元役員から聞いた話では、コニカミノルタの買収に当たっては、ソニー以外にもコニカミノルタを欲しいと思ったライバルがいたという。しかし、その会社は「コニカミノルタのカメラの技術が欲しい」と言い、ソニーは「コニカミノルタのαシリーズのレンズ資産を引き継ぎたい」と述べ、それがコニカミノルタのカメラ開発リーダーの心に刺さり、ソニーとの交渉が実る結果となったという。

 カメラ業界には、「カメラ本体は腐るがレンズは腐らない」という言葉があるらしい。それくらいレンズ資産は重要ということだ。現在、ミラーレス一眼カメラの市場シェアはデータによってバラツキがあるものの、1位がキヤノン、2位がソニー、3位がニコンだという。キヤノンは、本体性能が優れている上にレンズラインアップが豊富である。一方のソニーは、後発の非カメラメーカーとして、プロユースのユーザーに対してソニーのカメラの信頼を得るために、コニカミノルタのレンズ資産を引き継いだ上に、高級レンズの開発にも力を注いだ。

 ちなみに、本体が腐るというのはカメラ本体に価値がないという意味ではない。カメラ本体は技術革新が速く、すぐに古い製品になってしまうということだ。この技術革新の速いカメラ本体でコアとなる技術がイメージセンサーである。

 カメラメーカー各社はそれぞれ独自のカメラ用高性能CMOSイメージセンサーを開発しているが、この点でもソニーはビジネス上のメリットがある。キヤノンは自社開発のセンサーを自社工場で生産している。ニコンは自社開発したセンサーをソニーに生産委託していると言われる。ソニーは、CMOSイメージセンサーの世界ではスマートフォン向けセンサーで世界で50%以上のシェアを有するトップメーカーである。

 CMOSイメージセンサーは半導体であり、半導体は莫大な設備投資を伴う装置産業であり、数を多く作れば作るほど利益率は高くなる。スマホ向けセンサーという大きなビジネスがあるからこそ、ソニーのカメラ事業で高性能センサーをこなれたコストで採用することができている。