さらに注目すべきは、「医療・福祉業界」での不幸せ実感の高さです。この業界は、社会的意義が極めて高く、また労働者の貢献実感も本来的に高いはずの業種です。にもかかわらず不幸せ実感が高い原因は、長時間労働と処遇の不遇、そして裁量のなさなど、その高い社会的意義を上回るほどに負担が大きいということが考えられます。

 つまり、「社会的意義が高くやりがいのある仕事をしていても、労働条件が悪ければ幸せにはなれない」という厳しい現実を物語っているのです。

年収1500万円以上で
不幸せ実感が上がった理由

 最後に、個人年収別でも見てみましょう。年収が500万円以上になると、それ以降は収入が上がるほど幸せ実感が高まり、不幸せ実感が低下する傾向がありました。

図表:個人年収別に見た、働く幸せ・不幸せの実態同書より転載 拡大画像表示

 ただ、幸せ実感は右肩上がりになる一方で、不幸せ実感は「1000~1500万円未満」が最も低く、1500万円以上になるとやや上がる傾向がありました。

『職場の憂鬱「無気力な毎日」には理由がある』書影職場の憂鬱「無気力な毎日」には理由がある』(前野隆司、SBクリエイティブ)

 国税庁が実施した令和6年度の調査によると、日本で年収が1500万円を超えるのは、給与所得者のうちわずか1.7%です。それだけの年収になると、給与による満足度も高いですがその分苦労も多く、結果として「幸せ実感」も「不幸せ実感」も高くなるのではないかと考えられます。

 これまでの研究で、収入が増えるほど幸福度の上昇率は減少することが明らかにされていましたが、これは、高年収層の不幸せ実感の上昇に起因するというべきなのかもしれません。

 このように、私たちが働く中でどれほど幸せを感じられるかは、年齢や職位、雇用形態、業種、年収などによって大きく異なることが、調査データから明らかになりました。もちろん個人差はありますが、それぞれの条件によって幸せ/不幸せの実感には一定の傾向が見られます。だからこそ、自分の幸せや不幸せを左右する要素を知ることが重要なのです。