その理由は、「自己裁量因子(自分のペースで仕事ができる)」と、「役割認識因子(仕事の意味を自分で見いだせる)」が、フリーランスでは圧倒的に高いことにあると考えられます。

「教育・学習支援業」や「農業・林業」「電気・ガス・熱供給・水道業」で、働く幸せ実感が高い傾向がありました。

図表:業種別に見た、働く幸せ・不幸せの実態同書より転載 拡大画像表示

 農林業の幸せ実感が高いという結果を裏づけるような、興味深いエピソードがあります。あるITエンジニアの方は、都会で年収1000万円を得て生活していました。

 しかし、ある日思い切って田舎に移住し、農業に転身します。年収は3分の1に激減しましたが、その方は「幸福度は100倍になった」と語ってくれました。理由を聞くと、周りの人から野菜をもらい、家賃が安く、スーツ代がかからず、結果的に貯金もできているからとのことでした。

 年収の数字だけを見れば明らかに「損」のはずなのに、本人の実感としては圧倒的に幸せになった。お金と幸せの関係が、必ずしも比例しないことを示す好例です。

やりがいのある仕事でも
不幸せを感じる理由

 一方で、不幸せ実感が高かった業種を見てみましょう。一番は、「農業・林業」(3.90)、次いで「運輸業・郵便業」(3.55)、「製造業」(3.52)などでした。

 これには驚いた人も多いでしょう。なんと、農業・林業は、先述の通り幸せ実感が4.75と高いにもかかわらず、実は不幸せ実感も全業種中で最も高いのです。「幸せと不幸せが同時に存在する」という、アンビバレントな構造があることを理解いただけたかと思います。

 天候や収入の不安定さ、肉体的な負荷といった厳しさと同時に、自然と向き合う充実感や人とのつながりがある──先ほどの元ITエンジニアの方の実感とも重なります。