法人が不動産を購入する目的には、賃貸経営や転売目的の投資だけでなく、資産ポートフォリオへの組み入れによる財務・税務戦略、社宅利用や接待・保養目的の施設なども考えられます。
このように、都心の新築マンション市場に、顔の見えない法人や多種多様な業種の法人が相当数参入していることが浮かび上がってきました。
千代田区の物件、個人購入者の
半数超が23区外の富裕層
さらに非居住の個人購入者の所在地(登記簿記載の住所)についても調査しました。
千代田区のAマンションでは、購入者の47%は東京23区内の居住者でしたが、残りは全国各地および海外に住所のある人たちでした。具体的には、26%が1都3県や群馬県太田市、名古屋市、秋田県横手市などの国内各地の居住者、26%が中国や台湾など外国の住所を持つ購入者でした。なお、外国住所の購入者は、このマンション全住戸の8%でした。
このマンションは価格が非常に高いため、購入資金を回収できる水準の家賃に設定すると、借り手がつかないほど高額になってしまいます。そのため、現実的な家賃に抑えざるを得ず、結果として賃貸経営での利回りは低水準にとどまります。こうした点を考えると、セカンドハウスや別荘としての利用を兼ねながら、将来の値上がりによる売却益も狙うといった国内外の富裕層による資産保有・資産退避目的の購入が多いと考えられます。
一方、大阪市西区のCマンションでは、非居住の個人購入者の約9割が大阪府、和歌山県、兵庫県、京都府、奈良県を含む関西圏の住所となっていました。少数ながら、東京23区、名古屋市、中国などの外国に住所がある個人による購入も見られましたが、全体としては関西圏内の動きが中心でした。
東京の住宅価格高騰を受けて、大阪都心の物件にも全国各地からの購入者が流入している可能性を想定していましたが、今回調査したマンションについては、住まない買い手の大半が関西圏の個人や法人で、その傾向は見られませんでした。
『マンション高騰の真実 都市部の「非居住化」が街を壊す』(野澤千絵、中央公論新社)
ただし、大阪の都心部でも状況は変わりつつあります。万博の跡地では、2030年秋ごろの開業を目指して統合型リゾートの開発が進んでおり、7月には副首都法も成立しました。こうした動きを受けて、大阪でも東京と同じように、全国各地や海外からの「住まない買い手」がさらに台頭していく可能性は十分にあると考えられます。
この問題は、東京や大阪のような大都市圏だけに限りません。地方都市でも、駅前や都心部の再開発エリアを中心に、同じような現象が起きています。
このように、住宅市場の主役が「住み人」から「住まない買い手」へと移っていき、彼らが所有する住宅が街の中に増えていく状況が常態化すると、たとえ流通量が増えたり価格が下落したりしても、実際に「住む人」の手に渡る住宅は一向に増えないという事態を招きかねません。
さらにマンションの中に非居住の個人・法人に所有される住戸の割合が過度に増えるリスクです。そうなれば、所有者同士の連絡や合意形成が取りづらくなり、マンション管理組合の運営にも大きな影響を及ぼすおそれがあります。







