がんより認知症が
恐れられるのはなぜか
ところで、あなたが「いちばんなりたくない病気」はなんですか?
太陽生命が実施した「認知症に関する調査」(2025年)では、最もなりたくない病気は「認知症」の43.1%。2位の「がん」21.7%に大差をつけての1位で、その理由は「周囲に迷惑がかかるから」が83.7%でした。この結果に頷く人も多いのではないでしょうか。
では、認知症が日本人の死因のトップだと言ったら、驚くでしょうか。「日本人の死因の1位はがんじゃないの?」と、不審に思った人も多いと思います。
前者は世界の人々の健康状態を評価する国際プロジェクト「世界の疾病負担研究」の一環として実施された研究によるもので、後者の厚労省の統計データとは病気・死因の定義や算定方法が異なり、がんは部位別など140種類に分けられています。
これによると、2021年の時点で「アルツハイマー病や他の認知症」が主な死因のうち最多で、10万人あたりの死亡数は135人。これは世界でも最多だそうです。ちなみに厚労省のデータでは、2024年現在、アルツハイマー病が主な死因の10位で、1.6%を占めています。
『お医者さんはなぜ「がんで死にたい」と言うのか?超長寿時代の老いと死を考える』(佐藤眞一、光文社)
認知症が忌避される背景には、アンケート結果にもあるように、さまざまな迷惑を、支えてくれる身近な人に特に大きくかけてしまうことが、まず1つあります。暴力や暴言、妄想などの、問題行動と呼ばれる「行動・心理症状」が現れるのではないかという不安があるのでしょう。さらに、家族はおろか自分のことさえわからなくなって、アイデンティティの喪失に苦しむのではないかという恐怖もあります。
しかし、いいこともあります。がんのように死を宣告されることはありませんし、本人の特性を理解して安心して過ごせる環境を用意すれば、アルツハイマー病をはじめとするほとんどの認知症では、安定した質の高い生活を送ることが可能です。
認知症への理解が進んでいなかったために、不適切な環境や対応で行動・心理症状を増悪させてしまっていた、昔のイメージに囚われて怖がる必要はありません。
また、最も多いアルツハイマー型認知症では予防薬の開発が進みつつありますし、血液による簡便な検査方法も完成に近づいています。発症したら死を覚悟しなければならなかったがんが、今では「ピロリ菌を除去して胃がんを予防しよう」とか、「手術と抗がん剤を組み合わせて治療しよう」などと予防法や治療法を考えることができるように、いずれは認知症も、予防法と治療法を考えられる時代がやってくるはずです。







