
「正しい社会とは何か?」
結婚の申し込み。
横沢、本気だったのか。困惑するりん。「それとも誰か心に決めた人でも」と言われ、表情が微妙に揺らぐ。新潟の海で「いとおしい」と語り合ったシマケン(佐野晶哉)のことが当然脳裏をかすめたであろう。
ここで横沢は明晰にりんの長所を述べる。
「この1年。東京に来て様々な人に出会いましたが、りんさんのように面白い人はいませんでした」
りんが世の中の当たり前に流されず、なぜ?と疑問をもつ姿勢を横沢は評価する。さらに3つ、彼女の長所をあげる。
1:ヒトを押しのける強さではなく、自分の思う道を歩む強さ。
2:困っている人を放っておけない勇敢な優しさ。
3:差し入れの趣味の良さ。
横沢のおかげで、何事にもはっきりしている直美と比べ、ややわかりにくい印象もあるりんの個性がよくわかった。
ここで、着目したいのは「人を押しのけず、自分の思う道を歩む強さ」である。
自分のやりたいことをやるために他者を押しのけてしまうことがある。逆に、押しのけられてしまうこともある。他者を押しのけたくないから遠慮することなく、かつ、押しのけず、自分の思う道をゆく。このりんの個性は大事なことだと思う。
りんを褒め殺したあと、横沢は「私は間違いなく出世します」とアピール。以前、りんに「正しい社会とは何か?」と聞かれた時の答えをやっと見つけたと言う。
「一文字変えて『楽しい』。一緒に楽しく暮らしましょう。必ず、幸せにします」
さすが、知的エリート。りんを褒め、自分もアピールしたうえでりんの問いに応える形でプロポーズの必然を述べた。
正しい社会より、楽しい社会。
正しさを追求してぶつかりあい、正しくないものを排除しようとするよりも、楽しさを追求するほうが精神衛生によさそうだ。
だが、我が道を行くタイプのりんは、「これでも私、今幸せなんです」と答える。
「もっと幸せになりますよ」と横沢も負けない。
「でも、私は自分の力で」とりんは「自分の力」にずっとこだわっている。
横沢は、ここでいったん、議論を止めて、花を差し出し(どこに持ってた?)帰っていく。
そこでタイミング悪く、シマケンが花を持ってやってくる。
「正式に結婚を申し込んできました」と横沢はシマケンを牽制する。
目が丸くなるシマケンに「お墓参りですか?」「ではお寺まで」と強引にその場から連れていってしまう。
スマートに人を押しのけている横沢。彼のもってきた花よりもシマケンの花は地味だった。「お墓参り」はとぼけたふりをして痛烈な嫌味にも思える。
才気煥発、器用な横沢
ナイーブで不器用なシマケン
おもしろいのが、どっちも言葉で勝負している文系同士。ジャーナリストと小説家ではこんなにも違うことだ。








