欧米では「Disease of Kings(王の病気)」と呼ばれる痛風。美食ゆえのぜいたく病とやゆされてきたのだが、どうも遺伝的な影響が大きい疾患らしい、ということがわかってきた。

 日本では、防衛医科大の松尾洋孝講師らを中心とする複数大学の共同研究グループが継続して痛風と遺伝との関連を調べている。この6月に、腎臓の尿酸処理に関連する「ABCG2」遺伝子に特定の変異がある男性は、20代以下でも痛風発症リスクが22.2倍も高くなるという報告が英科学誌に掲載された。

 ABCG2は、世界に先駆けて同グループが発見した「痛風原因遺伝子」だ。先行研究では、日本人男性の痛風患者161人を含む228人の抗尿酸血症患者と血清尿酸値が正常範囲の856人を比較検討している。その結果、痛風患者の8割はABCG2の変異を持ち、10人に1人は痛風の発症リスクが26倍も高くなる「超」ハイリスク変異の保持者であることが判明した。

 6月の報告は、この超ハイリスク変異についてサンプル数を増やし、詳しく調査したもの。日本人男性の痛風患者705人と健康な男性1887人を比較した。前述したように、超ハイリスク変異持ちの場合は若いうちに痛風を発症する可能性が高く、発症の平均年齢は38.2歳だという。ABCG2遺伝子に変異がない場合と比べて、6.5歳も若い。

 激痛と関節の腫れを特徴とする痛風。致死的ではないだけに「喉元過ぎれば……」の典型ともいえる病気である。過食過飲を慎めばいいのだが、なかなか続かない。「痛風発作は元気な証拠」と言い切る強者もいるそうだ。とはいえ、尿酸高値が続くと痛風発作どころか、尿路結石や腎機能障害を引き起こしかねない。

 ABCG2の遺伝子変異を調べる検査は、同研究グループの特許使用許可を得て、日本の民間臨床検査会社が受託している。尿酸値の乱高下を繰り返しているなら、一度は遺伝子診断を受けてみるといい。変異の有無によっては、ビールのがぶ飲みを控える気持ちになる、かもしれない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)

週刊ダイヤモンド