中国における企業債務の過去3年間の累積拡大幅
(GDP比)

拡大が続く中国の企業債務、ハイテク産業中心の成長戦略は「日本化」を食い止めるか

 中国経済が、バブル崩壊後の日本のような長期の成長停滞に陥るのではないかという「日本化」論は、依然として根強い。

 確かに中国は、日本と同様に不良債権の早期一括処理といった“外科手術”を避けたため、不動産市場の調整は長引いている。日本の後を追うように高齢化も急速に進んでおり、停滞に拍車をかけている。

 ただ、「日本化」の特徴であるバランスシート調整については、ここ数年は企業部門を中心に日本と異なる動きが進んでいる。

 債務の対GDP(国内総生産)比を見ると、中国の家計債務は60%まで拡大した後に横ばいが続き、消費停滞の要因となっている。70%程度で長期にわたり横ばいが続いた日本と似ている。

 異なるのは企業債務の動きだ。

 2016年から22年にかけて160%弱で横ばいを続けた後は再び拡大に転じ、ここ3年で22%ポイントも増加して180%に達している。日本の企業債務が140%のピークから100%で安定するまで、20年近く低下を続けたのとは対照的だ。

 ただ、注意すべきなのは、中国で企業債務が再び拡大しているのが、国のハイテク奨励策の恩恵を受ける国有企業などに限られる点だ。それ以外の大半の企業は過去の過剰投資とバランスシート調整圧力に苦しんでおり、これを支える銀行システムでも信用リスクが高まっている。

 中国当局は、産業政策や補助金で次世代ハイテク産業におけるグローバル覇権を握ることで経済再生の原動力とする戦略を描く。

 一方で、不動産市場や家計・企業のバランスシートの調整には、時間をかけて辛抱強く取り組む構えだ。

 問題はハイテク産業強化一本やりの成長戦略によって、経済全体の「日本化」圧力を覆せるかどうかだ。ただし課題は多く、目が離せない状況が続く。

 ハイテク産業の発展は著しいが、経済全体をけん引する力には限界がある。雇用や所得を通じた家計への波及、サプライチェーンを通じた他産業への恩恵はいずれも限定的で、内需の停滞には歯止めがかかっていない。

 一方で、深刻化する国内の供給過剰に対処するため、低価格戦略による輸出の急拡大が続いている。今後、輸入国側で強まる保護主義的な動きは、輸出・生産主導の成長モデルの持続性を危うくするだろう。

(オックスフォード・エコノミクス 在日代表 長井滋人)