
全国に約500組織ある農協の有価証券の含み損が合計6000億円超に膨らんでいることが分かった。日本の長期金利の上昇によって時価が下落した債券の“損切り”に追い込まれ、赤字に転落したり、内部留保が9割減ったりする農協が出てきている。債券運用の失敗で、次に巨額赤字に陥る農協はどこだろうか。ダイヤモンド編集部の独自調査で、全国455JA中、有価証券の含み損が合計100億円を超える農協が10JAあり、損切りを迫られかねない“危険水域”に陥っている農協が42に上ることが分かった。長期連載『儲かる農業 JA・豪農・アグリビジネス大激変』内の特集『JAが大淘汰時代に突入!? 国債の「巨額損失リスク」農協ランキング』の本稿では、債券の損切りで巨額損失に陥る可能性が高まっている農協ランキング完全版(ワースト455JA)を大公開する。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文、データ分析 小海敬義)
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債券を“損切り”したJAは、内部留保が9割減
次に国債で巨額損失に陥る農協はどこか?
農協では近年、職員が営業ノルマを達成するために本来不要な共済(保険)を自ら契約する「自爆営業」や、職員の大量離職といった問題が続出してきた。しかし、農協の“大淘汰”を引き起こしかねない大問題は、それらとは別のところから生じた。全国の農協の大部分で、保有する日本国債や地方債といった債券の含み損が膨らみ、財務を毀損するリスクが高まっているのだ。
実は、JAグループには、農協より先に債券運用に失敗して巨額損失を出した組織がある。2024年度に約1兆円の有価証券売却損を計上し、1.8兆円の最終赤字に沈んだ農林中央金庫だ(前年度は636億円の黒字)。
欧米における金利上昇によって、農林中金が保有する外国債券の評価額が下落。それにより、出資者である農協への配当が困難になるなど財務が悪化して、保有債券の“損切り”を迫られた。
同様のことが農協でも起きようとしている。
農協が保有する有価証券の8割超が、国債、地方債、社債だ。上図の通り、日本の長期金利が上昇するにつれて債券の時価は下がり、農協の有価証券評価損額は24年度、連結で6180億円まで膨らんだ(ダイヤモンド編集部の調査で評価損額が確認できた455JAの合計。25年4月現在の全農協数は496)。農協の運用をサポートする金融機関関係者は「さらに金利が上昇すれば、農協の有価証券の含み損は1兆円を超えかねない」と話す。
すでに“損切り”を行った農協では内部留保の大部分が吹き飛ぶなど、出資者である組合員にとっては看過できない事態となっている。
上表の5JAのうち、債券の損切りに踏み切った愛媛県のJAおちいまばりは24年度、有価証券売却損を48.5億円計上(利益剰余金は前年度比77%減)、JA高知市は同43.2億円計上(同91%減)、JAみやぎ登米は同37.6億円計上(同79%減)となっている。
これら3JAに続いて、巨額赤字に沈む可能性が高い農協をあぶり出すため、ダイヤモンド編集部は、455JAの有価証券の「含み損リスク」を独自に算出した。すると、有価証券の含み損が合計100億円を超える農協が10JAあることが分かった。前出の3JAが損切りする前の23年度の同リスク(JAおちいまばり12.6%、JA高知市26.4%、JAみやぎ登米15.5%)の平均18.2%を上回っている農協が56あり、このうち損切りを迫られかねない“危険水域”に陥っている農協が42に上ることが判明した。
次ページでは、全国455JAの含み損リスクを一挙公開する。過去には、経営が悪化して近隣の農協に救済合併されたり、組合員の出資金を1口分1000円まで大幅に減額したりした農協が存在し、いずれのケースでも出資者や取引先に多大な悪影響を及ぼした。次に淘汰される農協はいったいどこなのか。











