バウンダリーの観点でいえば、評価を変える=あきらめるのは、自分を守るために解釈を変更するということ(写真はイメージです) Photo:PIXTA
人間関係にまつわる悩みや苦しみは、「境界の混乱」から生まれます。それなのに、多くの人はそれに気づくことなく、「自分が悪いんだ」「あの人のせいだ」と自分や相手を責め、終わりのない悩みにひとりでつらさを抱えこんでしまいます。バウンダリーとは、お互いを尊重しながら、お互いが納得のうえで「境界線」(バウンダリー)を引く考え方です。職場や家庭で起こりがちな事例で見る「境界線」の引き直し方とは?※本稿は白梅学園大学の長谷川俊雄名誉教授の『しんどい人間関係に境界線をつくる心地いいバウンダリー』(日本文芸社)の一部を抜粋・編集したものです。
その問題、じつは
バウンダリーが原因でした
人間関係にまつわる悩みやトラブルは、バウンダリーの視点から見てみると、みるみる原因が明確になってきます。そして、原因がわかれば対処法も見えてきます。
ここでは、僕がソーシャルワーカーとして出会った事例と、それらの解決法をいくつかピックアップしました。ご自身や周囲の経験と重ね合わせながら、「境界線」の引き直し方の参考にしてもらえたらうれしいです。
CASE(1)「感情・意志の境界」の混乱
職場の上司に「ノー」がいえない
職場の人間関係がうまくいかない、しんどいという人に、僕はよく「やりたいことと今の職場はイコールでつながっていますか?」と尋ねます。やりたいことはやれているけれど、人間関係がうまくいかないというのが、いちばん面倒ですよね。自己実現できる場所に立っているのに、それが人間関係に阻害されていく矛盾や葛藤を背負わなければいけないのはしんどいものです。
続いて、その職場でよい場面と悪い場面を尋ねると、多くの人は悪い場面と悪い人間関係しか思い浮かびません。実際には気が合う人もいるし、誰かとランチに行って楽しくおしゃべりをすることもあるのに。悲しい、苦しい、つらいことに直面すると、どんどんそのことで頭がいっぱいになって、自分が不幸の塊だと思いこんでしまいます。
そんなときは、しんどかった上司とのやり取りを振り返ってもらうなどして、僕が内容を書き出すという会話分析をしています。
「そのときAさんはどういう感情をもったの?」
「嫌だなと思いました」
「嫌だなと思いながら何ていったの?」
「はい、といいました」
こうしたやり取りから、Aさんは心のなかで嫌だと思っていたのに肯定したことで傷つき、自己嫌悪に陥ってしまったことがわかりました。
嫌だけれど、相手である上司の「境界線」を変えることは難しい。だから、僕は自分の「境界線」を引き直すことを提案します。ポイントは「課長が」「係長が」と二人称で語らず、「わたしは」と一人称で語ること。二人称で語ると、必ず「あなたはいいね」「あなたは駄目だ」と評価や批判につながってしまうからです。







