
滋賀県の農協の経営が危機にひんしている。金利の上昇によって価格が下落した国債の“損切り”を迫られたり、農家から集めたコメの値段が下がって農業関連事業が減益になったりして赤字に転落した他県の農協の後を追うように、経営の悪化が見込まれているのだ。長期連載『儲かる農業 JA・豪農・アグリビジネス大激変』内の特集『全国455JA“赤字&消滅”危険度ランキング【26年版】 金利上昇とコメ暴落で大淘汰!?』の本稿では、滋賀県において、債券とコメの暴落ショックに耐えられない可能性が高い農協を、独自試算であぶり出した。試算の結果、県内の9JA中7JAが赤字に転落することが分かった。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文、データ分析 小海敬義)
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JA滋賀中央会専務の不適切支出で、“農協離れ”が加速か
他県では債券の売却損で121億円超の赤字に沈んだJAも
金利の上昇に伴って暴落した長期国債の“損切り”を迫られ、赤字に転落する農協が続出している。
保有国債の暴落などによる減益ショックに耐えるための基礎体力がない農協を明らかにするため、ダイヤモンド編集部は、農協ごとの信用事業(銀行業務)、共済(保険)事業などの減益額や人件費の増加額を独自にシミュレーションした。試算の結果、滋賀県の農協では最大で8億4500万円の減益が見込まれ、9JA中7JAが赤字に転落する厳しい実態が判明した。
巨額損失に陥る農協が急拡大したのは2024年度だった。債券の“損切り”を行って、内部留保が大幅に減少する農協が相次いだのだ。具体的には、愛媛県のJAおちいまばりが有価証券の売却損を48.5億円計上(利益剰余金は前年度比77%減)、JAみやぎ登米が同37.6億円計上(同79%減)といったケースだ。
25年度においても、複数の農協が同様の理由で赤字に転落している。
25年度に巨額赤字を計上した農協の代表格が、静岡県のJA大井川だ。国債の売却損を計上し、同県内の農協として過去最大となる121億円超の最終赤字(前年度は連結で3億6876万円の黒字)に陥ったのだ。JA大井川の25年3月末現在のその他有価証券の評価損額は146億円。それから6カ月後の9月末現在には同164億円まで膨らんでいた。同農協は、ダイヤモンド編集部が今年2月に公表した、国債の「巨額損失リスク」農協ランキングで全国ワースト2位であり、要注意な農協だった(同ランキングの詳細は『【国債の「巨額損失リスク」農協ランキング完全版・ワースト455JA】有価証券の売却損で、内部留保が激減しかねない“危険水域”の42農協を一挙公開!』参照)。
赤字に沈んだ農協は、JA大井川だけではない。同一県内の農協が合併して誕生した大型農協においても有価証券の運用失敗によって損失が発生している。JA福井県は25年度、26億5109万円の最終赤字(前年度は連結で3210万円の赤字)。25年4月に和歌山県内の農協が合併して誕生したJAわかやまは77億1200万円の最終赤字。JA徳島県は40億7800万円の最終赤字(前年度は5億5100万円の赤字)に沈んだ。
25年度に赤字に転落した53JAについては、『【独自】農協が総計700億円超の損失を計上、赤字転落の53JAを一挙公開!長期金利上昇による保有債券の値下がりで経営が悪化、救済合併を模索する緊急事態』で詳報しているので、そちらを参照してほしい。
農協にとっての不安要素は債券の暴落にとどまらない。今後、米価の下落が経営を直撃しそうだ。すでに、25年産米の販売の苦戦によって1億円の減益になった農協もある。国債に加え、コメでも損失を覚悟した売却を強いられれば、滋賀県の農協の経営はより厳しくなる。
なお、同県の農協を束ねるJA滋賀中央会の代表理事専務が不適切な支出をしていたことが8月21日、報じられた。同専務は24年に就任してから半年余りの間に、業者などとの打ち合わせのためだとして、高級ナイトクラブやゴルフなどで約450万円の経費を使い、その一部が不適切な支出だったと外部の弁護士による調査で認定された。違法性は認められなかったこともあって、専務への処分はなく、弁済もされていなかったが、「今夏の報道によって問題が知れ渡り、全国の農協の信頼を損ねることになったため、本人が辞任の意向を示した。8月末で退任する見通し」(JA滋賀中央会関係者)だという。こうした上部団体のガバナンス低下は、農家の“農協離れ” を招きかねず、農協の経営にとっても懸念材料だ。
ちなみに、報道では、問題を起こした人物の実名は報じられていなかったが、専務とは、JA京都中央会の中川泰宏会長から重用されてきた、京都府出身の山田保氏である。山田氏は、JA全農京都副本部長からJA全農しが県本部長に昇進し、さらにJA滋賀中央会の専務に転じていた。この栄転人事の背景には、農協界における中川氏の影響力の大きさがあったとみられる(JAグループ京都の実態や、同グループ内での山田氏の位置づけについては『「農協界のドン」一族の世襲進むJA京都、幹部は違法疑われる「選挙運動」の異常事態』参照)。JAグループ関係者は、「(JA滋賀中央会が取材に協力して)不適切な支出を世に知らしめる報道が複数あったことは、滋賀県出身の農協関係者が山田氏に対して憤っていることの表れだ」とみる。この問題によって、JA滋賀中央会の農協に対する指導力が低下することは避けられないだろう。
次ページでは、減益による経営へのインパクトが大きい農協をリストアップした「JA“赤字&消滅”危険度ランキング滋賀編」を公開するとともに、県内のハイリスク農協の経営を徹底分析する。
過去には、経営が悪化して近隣の農協に救済合併されたり、組合員の出資金を1口分1000円まで大幅に減額したりした農協が存在し、いずれのケースでも出資者や取引先に多大な悪影響を及ぼした。農協ごとのリスクの算定方法を、経営環境の変化に応じて刷新した結果、明らかになった“消滅危機”農協はどこか。
JAグリーン近江、JAこうか、JAレーク伊吹、JAレーク滋賀、JA湖東、JA滋賀蒲生町、JA東びわこ、JA東能登川、JA北びわこ







