儲かる農業2025 日本の夜明け#5新潟県産コシヒカリを試食する全国農業協同組合中央会(JA全中)の山野徹会長(2023年11月9日の記者会見で) Photo:JIJI

JAグループを束ねるJA全中が、ITシステムの開発に失敗し200億円の損失を出したことが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。JA全中は、システムを使う農協などに負担金の増額を求めており、強い反発を受けている。今回の失敗は、農協界を牛耳ってきたJA全中の機能不全の象徴といえ、役員の辞任や組織の改廃は避けられない情勢だ。特集『儲かる農業2025 日本の夜明け』の#5では、JA全中の失敗の本質を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

不良システムの維持費は
当初想定の2.8倍の年間20億円!

 全国に500組織ある農協を束ねるJA全中は、農協への監査権限を持つ指導機関としてJAグループを牛耳ってきた。ところが2014年の農協改革で、監査・指導権限が剥奪されると、予算の削減や人材の流出に見舞われた。

 JA全中の下部組織として47都道府県にあった農協中央会(以下、県中)も、JA全中同様に権限と予算、人員の縮小に見舞われた。

 JA全中と県中は、農協法で特別に認められていた監査・指導権限を失い、リーダーシップやJAグループの各組織の利害を調整する機能を急速に失っていったのだ。

 そのJA全中が、ITシステム、新Compass-JAの開発に失敗し180億~220億円の損失を出し、システムを使う農協などに負担増を求めていることが分かった。

 実は、JA全中がシステム開発に失敗するのは今回が初めてではない。17年、何度試験やリハーサルを行ってもまともに機能しない状況のシステムを稼働させて10億円もの損失を出したことがあった(詳細は特集『農協の病根』(全8回)の#4『溶かした「農家の血税」は10億円、JA全中がシステム開発で痛恨のミス』参照)。

 なぜ失敗は繰り返されたのか。次ページでは、JA全中の失敗の本質とその損失額、農協への影響などを明らかにする。