「社長のイスはいらない。そのかわり…」会社幹部が突きつけた〈とんでもない要求〉【マンガ】『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営を解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第77回では、「非常ボタン」としての臨時株主総会について解説する。

「社長の椅子はいらない」代わりに求めた報酬とは

 外資系ファンド・サンデーキャピタルを通じて新興アパレル企業・T-BOXの買収を狙う一ツ橋商事の井川泰子。彼女はT-BOXの経営陣を分断させるため、同社の幹部である大林隆二を呼び出す。そこで井川は、買収工作に協力すれば、その見返りとして大林が社長になれるように取り計らうと提案する。
 
 だが大林はそれを拒否する。T-BOXの創業者で現社長である花岡拳に、すでに大林と井川とのつながりが露呈しているからだ。そんな状態で不穏な動きをすれば、すぐにでも取締役を解任されると漏らす。

 それでも食い下がる井川に対し、大林は「社長の椅子はいらない。そのかわり金くれよ」と言い放ち、買収工作の対価として現金1億円を求めるのだった。

 一方その頃、花岡は創業時からの大株主である塚原為ノ介のもとを訪れていた。

 サンデーキャピタルがT-BOX株を買い進める中、塚原から臨時株主総会の開催を提案してもらい、花岡が代表でいることの是非を議題にかけようと考えていたからだ。しかし塚原はその考えを読んだ上で、提案を断るのだった。

臨時株主総会は、株主が押せる「非常ボタン」

漫画マネーの拳 9巻P119『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 上場企業で「株主総会」といえば、年に一度の定時株主総会を思い浮かべる人が多いだろう。だが、経営トップの解任や取締役の選任など、次の定時総会まで待てないような経営に直結する問題が起きたときには、経営陣だけでなく株主からも「臨時株主総会」を開くように働きかけることができる。

 もちろん、株主なら誰でも自由に開催を提案できるわけではない。前回までにも触れたとおり、公開会社では原則として「議決権の3%以上を6カ月前から継続して保有する株主」には、取締役へ株主総会の招集を請求する権利が認められている。

 もし会社側が招集手続きを進めない場合などには、裁判所の許可を得た上で、株主自らが総会を招集することもできる。時として臨時株主総会は、経営陣だけに会社の意思決定のタイミングを握らせないための「非常ボタン」として働くと言える。

 今回、花岡は大株主である塚原に「自分自身が社長であり続けることの是非」をかけて、その非常ボタンを押してもらおうと画策した。だが、そんな騒動すら楽しもうとする塚原はこれを断る。

「君にとって株主とはなにかね…」と問う塚原に、花岡は「もちろん神様ですよ」と即答する。

 会社の重要な意思決定を最終的に左右するのは株主である――塚原の態度は、そんな上場企業の現実をあらためて思い知らされるものと言える。

 塚原の助力を断られた花岡は自ら動き出す。取締役会において、自らの進退を問う臨時株主総会の開催を提案するのであった。

漫画マネーの拳 9巻P120『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 9巻P121『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク