「プライベートの悩みにも寄り添う」「週末のゴルフに誘い、よく飲みに行く」。一見、人間味に溢れるアットホームな上司に見えますが、この「間違った距離感」こそが、贔屓やパワハラを量産し、組織を内側から腐らせる原因です。会社は学校でもなければ家庭でもありません。この記事では、書籍『リーダーの仮面』をベースに、50代のベテラン管理職が受け入れるべき「プロとしての孤独」と、本当の信頼関係について解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

部下と「友達」になろうとする50代上司が、老後に後悔するワケPhoto: Adobe Stock

会社を「家庭」と混同するな

 50代のベテラン管理職の中には、「若い部下と友達のような関係を築くこと」が、今の時代の正しいマネジメントだと勘違いしている人が非常に多くいます。

「プライベートでも仲良くなって、腹を割って話せるチームを作りたい」

 そう思って、週末のゴルフに誘ったり、頻繁に飲み会を企画したりします。

 しかし、会社とは「成果を出し、利益を獲得する」ために集まったプロの集団です
 仲良く楽しむための「学校」でもなければ、無条件の愛を提供する「家庭」でもありません。

 上司が部下と「友達」になろうと距離を縮めた瞬間、組織には決定的な崩壊へのカウントダウンが始まります。

距離が近いと「不満」が生まれる

リーダーの仮面』という本で私は、上司と部下の適切な距離感について、次のように「いい人になろうとする感情」に警鐘を鳴らしました。

これまでのあなたは、職場の同期や後輩と仲良くやってきたと思います。
しかし、リーダーになり、部下ができると、仲良くやっていこうとする「感情」が邪魔をします。
すでにこれまで仲良くやってきてしまった人は、まず距離を置くことです。
世の中には、「フレンドリーな人がいい人である」という固定観念があります。
フレンドリーだと、表面上の恐怖が減るので快適になります。
しかし、成長に必要な恐怖も感じにくくなってしまうので、緊張感がなくなり、なあなあの関係になってしまいます。
また、リーダーは「平等性」を保たなくてはいけません。
――『リーダーの仮面』より

 部下との距離が近くなると、上司にはどうしても「人間的な好き嫌い」「お気に入り」という感情が混入します。

「いつも飲みに付いてくるAくんは可愛いが、付き合いの悪いBくんは生意気だ」と、無意識のうちに評価や仕事の割り振りに「贔屓」が生じるのです。

 贔屓された側は甘えから成長を止め、贔屓されなかった側は不信感から腐っていきます。

50代リーダーが受け入れるべき「プロの孤独」

 部下に媚びを売り、良いおじさんでいようとするのは、定年後の孤立を恐れる50代の「精神的な弱さ」の現れにすぎません。

 しかし、現役時代に部下に好かれようとペコペコしていた上司ほど、定年退職した翌日から、元部下たちからは一切連絡が来なくなります。

 彼らが付き合っていたのは、あなた個人ではなく、「上司という役職(メリット)」だったからです

 逆に、現役時代には徹底して「仮面」をかぶり、プロとしての距離感を保って、結果だけを淡々と評価してくれた「厳しい上司」の言葉こそ、部下の心に「時間差」で残り、老後に本当の感謝となって返ってきます。

 リーダーは迷わず部下と距離をとり、プロとしての孤独を引き受けましょう
 それこそが、部下に真の生き抜く力を与え、組織を勝利に導くリーダーの覚悟なのです。