この年になって家族のある人を羨むとは、なんてわたしらしくないのか。身近に亡くなる人が多くなり、周りの景色が寂しくなったせいか。「ひとりは最高!」と心から言えない自分がいる。人生は一本道だとわかっているくせに……。
病院で患者に付き添っている家族を見ると「いいな」と思う。家族がいるということは、老人にとり一番の安全保障なのだ。おひとりさまがお金で頼るセコムより、やっぱり生身の人間、家族が一番なのかもしれない。
都会のマンション暮らしでは
「和」を築くことが難しい
「和を以て貴しと為す」という聖徳太子の言葉が、なぜかわたしの心を揺さぶる。「和か……」。
田舎で、地域総出で田植えなどを協力して作業する様子を見るたびに、「幸せだろうなあ」と思う。和をもって、どんな人とでも一緒に楽しめる人は、それはそれで素晴らしいと思う。でも、わたしはどうだろうか。
孤立する都会生活から脱出して田舎暮らしを求める人が多い昨今、そういうタイプの人は、和を求めているのだろう。
地域に人間関係がある人は別として、現代の都会マンション暮らしでは「和」を築くことが難しい気がする。都会にはコミュニティが存在しないと言っても言い過ぎではないだろう。
コミュニティとか共助とかの言葉を聞くと、なんて温かいスープのような言葉だろうと思うが、水を差すわけではないが、人が集まるところには必ず理解しがたい人がいるものだ。
Hさん(85歳)は、ひとり暮らしの寂しさから、単身女性向けのサ高住(編集部注/サービス付き高齢者向け住宅)への入居を決意した。自分と同じような価値観の人と交流して人生を終えたいと思ったからだ。
しかし、コミュニティルームはあるものの、入居者は皆さん自室に閉じこもり誰も出てこないので、自宅で暮らしているときよりも孤独だと嘆いた。
ある日、ひとりで散歩をしていると、近所に住むと言う女性と立ち話をしたのはいいが、物を売られそうになり、怖くなったという。







