つまり自傷行為とは、自殺以外の目的で「死なない程度に」自分を直接的に傷つける行為と言えるでしょう。と言っても、実際には「最初の1回は、本気で死のうと思って切った」という子どもも少なくありません。「切った瞬間に、心がスーッと軽くなった」と自傷のメリットを発見し、そこから依存が始まるのです。
子どもはどうして
リストカットをするのか
●食べてしまった自分への制裁としてリストカット
中学生になって体重が10キロも増えてしまったので、食事制限を始めました。朝はシリアル、給食は残し、夕飯は食べない。親は仕事で帰りが遅いので食べていなくてもバレません。なのにストレスがたまると甘いものや脂っこいものをドカ食い。あるとき食べちゃった自分への制裁として腕を切ったところ、血がにじみ出ていく様子を見て心がスッとしました。つらい日には、ドカ食いのかわりにリスカしています。(中2女子)
●祖母と母のどなり合う声から逃れたくて
父のアルコール依存症が原因で両親が離婚し、祖母の家で母と3人で暮らしています。祖母は「あんな男と結婚したせいで」と母をけなし、ささいなことでケンカします。私が不登校になったことで2人のケンカに拍車がかかりました。私なんて死んだほうがいいと思いますが、死ぬ勇気がなくてときどきリスカします。腕は切りすぎたので最近は太ももを切り始めました。このまま太い血管を切ってしまえば死ねるかな、と思うこともあります。(中3女子)
※以上は、実話にもとづいたフィクションです。
自傷の96%は
1人きりの状況で行われる
自殺が目的でないとすれば、何のために自傷するのでしょう。よくある偏見は「大人の気を引くためのアピール」、つまり「かまってちゃん」ということですが、それはまったくの誤解です。自傷の96%は1人きりの状況で行われ、そのことを誰にも話さないとする研究もあります。
一番の目的は「心の痛み」をやわらげるためです。「どうして体を傷つけると心がラクになるの?」と不思議に思うかもしれません。あなたは、どこかに足を強くぶつけたとき、思わずさすったり、ぐっと押さえたりしたことはありませんか。これは神経のメカニズムを利用した行動で、元の感覚を別の感覚に置きかえることで緩和しています。リストカットでも同様のことが生じていると言えるでしょう。つまり、「心の痛み」を「体の痛み」に置きかえることで平常心を保っているのです。







