米高級ブランドの秘密兵器:12ドルのテニスソックスPhoto:NurPhoto/gettyimages

 欧州高級ブランド業界の頂点に立つ富豪、ベルナール・アルノー氏にとって、市場は不快なメッセージを発している。株主は今や、同氏が率いる LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン の価値を、より安価な高級品を販売する米 ラルフローレン をわずかに下回る水準で評価している。

 この状況が示唆するのは、欧州の高級ブランドが消費者を取り戻したいなら、値下げという難しい決断を下さなければならないということだ。

 予想PER(株価収益率)で見ると、LVMHの株価はラルフローレンより3%割安となっている。ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールを傘下に持つ同社は、しばらく前から優位性を失いつつあった。かつてはラルフローレンに対して大幅なプレミアム付きで取引されていたが、そのバリュエーション格差は消滅した。

 このような事態が前回起きたのは10年以上前のことだ。当時はルイ・ヴィトンのロゴ入りデザインに消費者が飽き、売上高が低迷していた。LVMHはルイ・ヴィトンを刷新し、力強い成長軌道に戻した。

 成功する高級ブランドを育てることは、伝統的に欧州の強みだった。しかし今、市場動向を正確に読み、消費者が実際に何を買えるかを把握しているのは、ラルフローレンやコーチといった米国ブランドだ。

 ラルフローレンのパトリス・ルーベ最高経営責任者(CEO)は最近のポッドキャスト番組で、意図的に幅広い層の消費者をターゲットにしていると語った。「高級品とは4000ドル(約64万円)のハンドバッグだと定義されることが多い」とした上で、「それは安易な定義だ。われわれは32万ドルの時計を売る一方で、テニスソックスの12ドルのパックも販売している」と述べた。

 この戦略は奏功している。ラルフローレンの売上高は4ー6月期に前年同期比13%増加した。停滞が続く高級品市場において、同ブランドは7四半期連続で10%以上の成長を達成している。