
テクノロジーが進化し、暮らしが便利になったはずなのに、不安を感じる人はむしろ増えている。その原因は、時代や社会の変化だけではない。私たちは不安を煽るような商品に囲まれているからだ。誰もが抱えるこの不安な感情の正体に迫る。※本稿は、加藤諦三『不安をしずめる心理学』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。
われわれはどうして
こんなにも不安なのか
長い人類の歴史を考えてみると――新型コロナウイルスの問題が起こるはるか以前――もともと人間が不安に苦しみ出したのは、共同体の崩壊が始まった時からでした。
人類の歴史を辿ると、共同体から機能集団の歴史になりました。機能集団の一例は、会社などの組織です。一方、共同体というのは家庭などです。
かつては共同体に属してさえいれば、「君は君だから生きている意味がある、価値がある」とされた。人間はそこにいること自体に意味が持てました。
ところが、機能集団というのは共同体とはまったく異なり、そこに属しているだけでは価値や意味を持てません。
例えば、会社の部長が「俺は俺だから意味がある」と言って、その役割を果たさなければどうなるでしょう。会社は潰れてしまうかもしれません。
そもそも、その人が集団の中で求められている役割を果たさなければ、必要とされないでしょう。人間の社会は共同体から機能集団になったわけですが、この流れ自体が、我々にとって不安な時代に入ったことを意味しています。
競争社会で落ちこぼれる不安を
早く楽に癒してくれる商品群
さらに、現代について考えてみると、消費社会、競争社会へ変化してきました。実はこのことが、我々の不安をより強いものにしているのです。